勝ち抜く中小経営への強化書

役員や従業員への事業承継、円滑に進めるポイントは? 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 佐々木 真佑

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右腕人材を育成させる

 社内の役員や従業員が事業を承継した後に直面しやすい問題として、右腕となる人材の不足が挙げられます。親族への承継とは異なり、役員や従業員への承継では、経営者としての準備期間が不足しやすい傾向にあると言われます。十分な準備がないまま社長に就任すると、設備投資や銀行借り入れなど重要な経営判断について思い悩むことも多いでしょう。さらには、自身が担当してこなかった業務には不慣れな面もあり、後継者をサポートできる人物の存在が重要となります。

 ヒアリングした企業では、先代社長の右腕だった人物が引き続き後継者の右腕になってくれたり、かつての上司がサポートしてくれたりした例はありましたが、後継者が自ら右腕を選び育成したケースは見られませんでした。少子化の進展で、親族外承継の必要性が高まると予想される中、今後は後継者自身が右腕となる人材を見出したり、育成したりすることが期待されます。

 ただ、経営資源に制約のある中小企業にとって、これは容易なことではありません。そこで例えば、新規の設備投資や新製品の開発などの社内プロジェクトを後継者の能力を向上させる場だけでなく、後継者に自身の右腕を育成させる場としても活用してはどうでしょうか。大小を問わず、様々なプロジェクトを遂行する際に後継者がチームリーダーとして取り組んでいけば、メンバーの能力や人間性を見極めることができます。そうすれば、右腕候補を発掘したり、早い段階から育成したりすることも可能になります。

 後継者を教育するというと、何を教えるべきなのか悩んでしまうかもしれません。しかし、企業事例を見ると、先代社長は教えるというより、成長の機会を与えるという姿勢で臨んでいることがわかります。自らの考えを伝えることに終始せず、後継者自身で考える訓練をさせることが大きなポイントです。

<参考文献>

三井逸友(2015)「企業家・後継者の能力形成と事業承継-『中小企業の新陳代謝の促進策』にかかる調査研究」商工総合研究所『商工金融』第65巻第8号、pp.5-32

*本稿は、日本政策金融公庫総合研究所発行の『日本公庫総研レポート』No.2018-2「親族外承継に取り組む中小企業の現状と課題」(2018年6月)の一部を抜粋・再編集したものです。
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/soukenrepo_18_06_15b.pdf
佐々木 真佑(ささき しんすけ)
日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員。一橋大学商学部卒、一橋大学大学院国際企業戦略研究科専門職学位課程修了(MBA in Finance)。2006年、国民生活金融公庫(現・日本政策金融公庫)入庫。現在、中小企業、地域産業動向に関する調査・研究に従事。最近の論文に「金融機関に経営課題を相談した中小企業の特徴と業績の変化」(『日本政策金融公庫論集第41号』2018年11月)、「親族外承継に取り組む中小企業の実態」(『日本政策金融公庫論集第40号』2018年8月)などがある。

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