勝ち抜く中小経営への強化書

役員や従業員への事業承継、円滑に進めるポイントは? 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 佐々木 真佑

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社内プロジェクトを遂行させる

 しかし、どうしても時間や費用の制約があって社外で経験を積ませることができない場合には、どのような取り組みが有効でしょうか。ヒアリングした企業では、新規の設備投資や新製品の開発などの重要プロジェクトを担当させている例が見られました。プロジェクトを通して、リーダーシップや判断力を高めたり、自社の経営課題を認識したりすることができています。プロジェクトへの取り組みは社内の一般の仕事とは異なり、社外での経験から得られるのと同じように、経営的なセンスを身につける良い機会になっています。

 製缶板金業を営むC社の例です。現社長のcさんは、22歳で入社し、43歳で社長に就任しました。入社後は経理作業、見積書の作成から配送トラックの運転に至るまで、幅広い業務を任されたそうです。目の前の仕事を必死にこなしながら、あらゆる業務に対応できるようになり、周囲から頼られる存在となっていきました。

 1980年代には、取引先である大手企業のグループ会社から値引き要請が相次ぎ、C社の業績は悪化していきます。悩んだ先代社長は、社内の状況を誰よりも把握し、取引先との交渉を一手に担うcさんに、打開策を考えるよう求めました。

 熟慮の末、cさんは2つの案を先代社長に示しました。1つは大手企業のグループ会社からの仕事を減らし、新たな取引先を開拓していくことです。特定の取引先に依存することのリスクを説明し、先代社長に納得してもらいました。もう1つは長さ6メートルにも及ぶ金属板を一度に加工できる機械の導入です。溶接が必要なくなることで、低価格、短納期による出荷を見込めました。先代社長は借り入れをしてまで高額の機械を導入する必要はないと反対しましたが、今後の収支や借入金返済の計画を繰り返し説明して理解してもらいました。この機械を日本で初めて導入した実績が口コミで広がり、2年後には約100社の取引先を新たに獲得、業績は改善していきました。cさんはこの経験を承継後の投資判断にも大いに役立てているといいます。

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