勝ち抜く中小経営への強化書

役員や従業員への事業承継、円滑に進めるポイントは? 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 佐々木 真佑

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

多様な学びの機会を与える

 三井逸友氏の論文(2015、文末参照)では、異業種での体験の蓄積が仕事の中身や知識の幅を広げたり、視点を変えてくれたりすると指摘しています。しかし、人員に限りがある中小企業にとって、貴重な戦力である役員や従業員を他社に派遣し、実務経験を積ませることは現実的に難しいでしょう。では、承継後の経営に役立つような社外経験を、どのように後継者に積ませればよいのでしょうか。

 例えば、A社では先代社長が異業種交流会に参加したり、取引先を訪ねたりする際、aさんを常に同行させたそうです。社内の業務では得られない、経営者としての振る舞いを学んだり、他社とのネットワークを築いたりしたことは、社長就任後の経営に役立っているといいます。特に、専門の技術や技能を必要とする業種では、こうした取り組みが効果的だと考えられます。スキルの向上に多くの時間を費やす必要があるため、経営に求められる能力を身につけたり、幅広い人脈を構築したりする機会が少なくなりがちだからです。

 美容室をチェーン展開するB社の例を見てみましょう。現社長のbさんは、美容専門学校を卒業した後、20歳で入社し、45歳で事業を承継しました。入社後は同社のトップスタイリストとなり、25歳で店長に抜てきされ、30歳のときには全店舗を統括する部長に昇進します。毎年12月に翌年度の収支計画や予算を策定する際には、先代社長や各店長と納得するまで議論を交わしました。

 こうした社内での経験はもちろん、社外で学んだことも、承継後の経営に役立っているといいます。先代社長は会社を経営する上で人材が最も重要と考えており、従業員の美容技術だけでなく、後継者の経営能力を育成することに力を注いでいました。そこでbさんは先代社長から勧められ、松下政経塾出身の人物が運営する青年塾に28歳で入塾します。同社で勤務しながら、経営とは何か、リーダーはどうあるべきか、といったことを学び、経営者としての心構えができていったそうです。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。