日本企業では近年、親族以外の役員や従業員あるいは社外の人材を後継者とする「親族外承継」を選択する割合が多くなっていると言われています。今後、少子化もあり後継者不在に悩む企業が増えると見込まれ、親族外承継の必要性はさらに高まると考えられます。親族外承継の中でも、多いとされる社内の役員や従業員への承継を円滑に進めるには、中小企業がどのような取り組みを行えば良いかをここで考えてみましょう。
鍵となる後継者教育
企業規模が大きくなるほど、役員や従業員への承継を選択する割合は高くなると言われています。その理由の一つとして、役員や従業員の数が多い分、後継者候補となる人材を選定しやすいことが考えられます。そこで、従業者数が20人以上の「中企業」の経営者が抱える、円滑な事業承継に向けての課題をみると、「後継者を教育すること」が44.3%と最も多くなっています(図)。
図 円滑な事業承継に向けての課題(複数回答)
資料:日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するアンケート」(2009年)
(注)1:後継者が決まっている(本人も承諾している)と回答した企業と、事業承継の意向はあるが後継者が決まっていないと回答した企業に尋ねた結果。
2:集計対象は、従業者数が20人以上の「中企業」である。
親族への承継とは異なり、役員や従業員への承継では後継者が早い段階から引き継ぎを意識しているケースは多くありません。リーダーシップや判断力など経営者に求められる能力を十分身につけないまま社長に就任すると、思うように経営ができないこともあります。役員や従業員への承継では、後継者教育が親族への承継以上に重要です。では、経営資源に制約のある中小企業は後継者候補となる社内の役員や従業員を、どのように教育していけばよいのでしょうか。