日本の「中国人」社会

中国人が約4割、インターナショナル・スクールのような横浜の公立小 ジャーナリスト 中島恵

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餃子作りで国際交流

 この日は「第1回保護者ネットワーク MYぎょうざパーティー」が開かれていた。

 「実行委員8人全員が中国人の保護者さんというのは初めての試み。今日は中国人がリーダーで、日本人の保護者はサポートに回ります」(藤本校長)

 参加者は保護者、児童、教員など全部で150人。午後3時ごろから実行委員が集まり、餃子に入れる餡作りと皮の仕込みに取り掛かった。

 実行委員の中国人保護者は、「先生から推薦されて参加しました。このような会は初めてです。家でふだんから餃子を作っていますが、みんなで作るのはとても楽しい。今日は子どもも誇らしげだし、親子でとても喜んでいます」と話してくれた。

 餃子作りを担当するのは総勢60人。仕込んでおいた餡を皮に包んでいく作業を1時間以上かけて行った。中国人の母親の多くは手慣れたもので、日本人の参加者に包み方を実演して見せていた。日本人の母親も「中国ではどんな具を入れるの?」とか「餃子はいつも手作りするの?」などと聞いて興味津々の様子だ。

 ひときわ手際よく餃子を包んでいる母親、陳秋淋氏に声を掛けてみた。

 「息子が6年生で、もう最終学年なので、今日は仕事を休んで参加しました。市内で飲食店の管理職をやっています。もう日本に来て14年になります。夫も私もふだんは帰りが遅いので、息子は家で一人でいることのほうが多いですね。息子に焼きそばやチャーハンの作り方を教えました。自分でご飯を作ったり、食堂で食べたりしているようです」

 ほかに3歳と1歳半の子どもがいるが、仕事があるため、今は中国に住む祖父母のもとに預けている。陳氏によれば、この近辺では同じような家庭が多いそうだ。

 何人かに声を掛けてみたが、この学校でもやはり東北地方と福建省出身者が多いようだ。

 余談だが、餃子を家庭で作ったり、頻繁に食べたりしているのは主に東北出身者だ。福建省出身者は「買ってくる」、あるいは「あまり食べない」という人が多かった。

 中国では、ざっくり分けると北は粉食、南はコメ食で、南の人は北の人ほど餃子を食べない。私は中国人からよく「日本人は家庭でよく握り寿司を作るのでしょう? 今度、作ってみせて」といわれて困惑するが、同様に、中国人が全員、家庭で餃子を作ったり、頻繁に食べたりしているわけではない。

 藤本校長によると、出身地の統計は取っていないが、「なぜこの地区に住んでいるのか」というアンケートは行ったことがあるといい、回答を見せてくれた。川口市と状況が非常に似通っている。

 集約すると「住みやすい」「中国人が多く住んでいて安心できる」「職場が近い」「安い住宅がある」「(小学校での)日本語の指導が充実している」「商店街があって生活が便利」「中国人の親戚が以前からこの地区に住んでいた」といった回答だった。

 同胞が多ければ、日本語の能力があまり高くなくても誰かが助けてくれるし、日常生活に不自由することはあまりない、ということなのだろう。

 同校は中華街がある中区にも近く、学区は南区と中区の二つにまたがっている。地元の不動産業者の話では、「家賃相場は中区のほうが観光地に近くてやや高め、南区は下町なのでやや安め」だ。そのため南区を選んで住んでいるのかもしれない。

(つづく)

中島恵 著 『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社、2018年)、「第1章 なぜ、この街にばかり集まるのか」から
中島恵(なかじま・けい)
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリスト。中国、香港、アジア各国のビジネス事情、社会事情などを執筆している。著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』『なぜ中国人は財布を持たないのか』(ともに日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論社)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?』『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(ともにプレジデント社)などがある。

キーワード:経営層、管理職、プレーヤー、経営、営業、国際情勢

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