日経SDGsフォーラム

豊かな未来 木のぬくもりから SDGs 呼吸するように自然に

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 もし、人間が無意識のうちに呼吸をしているように、持続的な社会の実現に貢献できる取り組みがあれば、どれほどすばらしいことなのか。地球の未来を先食いすることなく、恵みをいただき、恩返しをするような事業によってより良き社会が広がっていけばなおさらだ。そんな姿勢を持ち続ける組織こそが新しい時代を切り開いていけるのではないだろうか。

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持続可能社会は地球への恩返し

 年輪。木の断面に同心円状に描かれるその模様は、樹齢を表すだけでない。長い歳月で遭遇した干ばつや日照不足など自然界の森羅万象を刻む。時には人為的な跡も正直に残す。燃えて炭になってしまってからもどの時代に生育していたことも教えてくれる。英語、TREE(木)の語源はTRUE(真実)とも言われる。歴史を積み重ね続ける地球が生んだ存在として住友林業は「時間財」として呼んでいる。

 そんな大切な時間財は私たちの生活に欠かせない存在でもある。それは「木のぬくもり」という言葉でもって言い尽くされる。工業的には加工しやすく、軽い。しかもしっかりと手入れをすれば長持ちする。成長過程では二酸化炭素(CO2)を吸収、固定して温暖化抑制に重要な役割を担う。木の本質を知れば知るほど、そこに携わる人間は重い責任を負うことに気づくはずだし、その恩恵を享受している我々ももっと木への関心を持ち関与すべきだろう。

 1691年(元禄4年)に創業した住友林業のCSRの歴史は、後に別子銅山(愛媛県)の永続的な植林と木材生産を繰り返す保続林業を目的として1894年(明治27年)に大規模造林事業を始めた。採掘で荒れた山を元の緑に戻す一心でのことだったという。

 市川晃社長をはじめ全社員がSDGsに取り組む原点がここ別子の山にある。入社すると必ず、この険しい山を登る。今では息を呑(の)むような静粛さと深い緑に包まれている風景からは山肌をさらしていたころの姿を想像するのは難しい。

 だが、それでもあえて山を目指すのは山の歴史を学び、「住友の事業精神」に盛り込まれている「自利利他公私一如(自分たちだけの利益ではなく、国家や社会の利益をかなえること)」の公益の精神を共有するためだ。豊かな森が蘇(よみがえ)ったことを実感し、「この山を守っていこう」という原体験になる。

 そして市川社長は日ごろから社員に向かってこんなことを話している。「もし仕事で迷っていたら社員の手帳にある住友の事業精神が盛り込まれた経営理念を読み直してください」

 木の可能性を突き詰めれば自然とSDGsと向き合うことになる。(編集委員 田中陽)

環境都市へ 超高層ビルも木で建てる――

 本業を一生懸命に推進することがSDGsにつながると考えて昨年、経営理念を見直して未来志向でグローバルな視点をもつ内容にしました。人と地球環境にやさしい「木」を活(い)かし、人々の生活に関するあらゆるサービスを通じて、持続可能で豊かな社会の実現に貢献します。すべての事業をSDGsの考えに照らし、織り込んで意思決定をします。

 さて、読者の皆さんには「木を伐(き)ること」に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも残しておくべき木を育て、間引きしながら森林を管理することもとても大切なのです。例えば伊勢神宮で20年に一度、造り替えられる式年遷宮は持続可能な取り組みの見本と言っていいでしょう。1300年続く式年遷宮は、樹齢約200年のヒノキを用材となるように計画・管理しています。歴史と未来を紡ぐ、遠大なものなのです。旧殿を支えた用材は、全国の神社の造営などにリサイクルされます。

 我が社も台風で被害を受けた富士山麓の国有林の復元活動を社員のボランティアで20年以上続け、地元の小・中学生の皆さん向けに環境学習も実施しています。森の再生には100年もの歳月が必要と言われているので、私たちは「100年見守る決意」です。

 2030年までに達成を目指すSDGsの17の目標と「木」を軸とした我が社の事業と擦り合わせると、どれも関連があることに気がつきました。それほど木には可能性があることを再認識したところです。木は将来の先食いではなく、過去の恵みを頂いています。未来に対してその恩恵を残すことが私たちの使命です。その暁に41年を目標に高さ350メートルの木造超高層建築物を実現するための研究開発構想「W350計画」をまとめました。高層建築物の木造化、木質化と街を森にかえる環境木化都市を目指します。

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