官民連携と地域連携で実現する地方創生

Society5.0で解決するまちづくりと地方創生

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 日経地方創生フォーラム「官民連携と地域連携で実現する地方創生~実装に入った地方創生 具体的事例から考える持続可能な経済循環~」(主催=日本経済新聞社、後援=内閣府、協賛=UR都市機構)が2018年12月14日、東京・大手町の日経ホールで開催された。「Society5.0で解決するまちづくりと地方創生」をテーマにしたセッションの模様を採録する。

Society5.0で解決するまちづくりと地方創生
■基調講演 Society5.0と地方創生

人間中心の社会実現

東京大学公共政策大学院 客員教授 増田 寛也 氏

 デジタル技術を活用したスマート社会「Society5.0」が到来する。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)、ロボティクスなどの急速な進展により、バーチャルとリアルの空間が融合し、生活が大きく変化する。遠隔地といったこれまで地方特有のハンディと思われた課題を克服するだけでなく、新たな価値創造までつなげられる。

 具体的には、地域や年齢、性別などによる格差がなく、多様で潜在的なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスの提供が可能になる。経済的発展と社会的課題の解決にも貢献できる。特に重要なのが、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送る、人間中心の社会の実現に役立つことだ。

 Society5.0が都市や圏域に与える影響は(1)従来型の空間・施設・インフラの重要度が低下する(2)情報入手量・範囲などが拡大することで、交流の範囲も拡大する(3)企業では世界的なレベルで開発や調達が進む(4)新産業創出とともにグローバルな取引が深化する(5)バーチャル情報を活用し、付加価値創出に貢献できる空間・インフラの重要性が高まる(6)デジタル人材に加え新しいサービスを構想する力を育むことが必要になる――などだ。

 なかでも(6)が重要だ。創造力や構想力にたけ、新たな戦略を立て実行に移すことのできるクリエーティブ人材が不可欠だ。地域には多様な文化や価値観を受け入れる寛容性に富んだ魅力的な都市づくりが求められる。

■パネルディスカッション

●パネリスト

農業・食品産業技術 総合研究機構 理事長 久間 和生 氏

東京工業大学 特命教授・名誉教授 柏木 孝夫 氏

認定NPO法人 グリーンバレー 理事 大南 信也 氏

富士通 デジタルフロント事業本部 デジタルビジネス事業部 ソーシャルエコノミー推進室 岩坪 慶哲 氏

●コーディネーター

東京都市大学 教授 坂井 文 氏

収益生む産業創出が鍵 久間 氏
AI活用し電力強靭化 柏木 氏
「創造的過疎」に挑む 大南 氏
データが経済価値生む 岩坪 氏
多様な主体の連携を 坂井 氏

 坂井 Society5.0に向けた取り組みを伺いたい。

 久間 情報通信技術(ICT)の発展で産業構造は実空間とサイバー空間を連携統合したサイバーフィジカルシステムの時代に移った。統合イノベーション戦略でもAIの活用とデータ連携基盤の整備がうたわれている。農業・食品産業技術総合研究機構では、農業を強い産業として育成し海外市場で農産物のシェアを伸ばす目標を掲げ、Society5.0の農業・食品版の実現を目指して、農業情報研究センターを開設した。

 柏木 エネルギー・環境の観点では二酸化炭素(CO2)削減・脱炭素、電力自由化・強靭(きょうじん)化が課題だ。電力強靭化では分散型と大規模型の間にレイヤーが必要だ。AI等のサイバーレイヤーと物理レイヤーが一体化し最適な制御を行えば、北海道で発生した全道ブラックアウトなども事前に防げる。ブロックチェーンも有効だ。複数の中間レイヤーでコンピューター同士を監視し合えば再エネも主力電源化できる。

 大南 徳島県神山町では人口の中身を変える「創造的過疎」に取り組んでいる。若者や創造的な人材を誘致し、ICTのインフラ等を利用して価値を高める考え方だ。まず国際交流からスタートし、アート事業で多様な人材が集まり、光ファイバー網敷設でビジネスに展開、ウェブの空き家情報で移住需要が顕在化した。将来有望な働き手を逆指名するワークインレジデンスも始まった。現在は子育て世代向けの集合住宅に取り組む。

 岩坪 シェアリングエコノミーは休眠資産や隙間時間の有効活用を促すもので、地方創生とは親和性が高い。高齢者の生活維持が課題の北海道天塩町では車の相乗りサービスを官民連携で進めている。ポイントは空席の可視化・デジタル化だ。また富士通のIoT事例ではマンホールの裏に水位センサーを取り付けた下水道氾濫検知などもある。Society5.0実現で重要なのは社会課題のテーマ設定とデータ化だろう。

 坂井 Society5.0時代の地方創生のイメージとは。

 久間 自律分散協調型社会だ。ICTの普及で地方でも多様なサービスを得られるようになる。地方で収益を生む産業の創出が重要で、収益を住民のためにどう使うかも鍵になる。

 柏木 1次産業の多次元産業化、キャッシュの流れの囲い込みが鍵だ。例えば太陽光などの再エネ固定価格買い取り制度をうまく使えば地方創生になる。良い循環を作ることが重要だ。

 大南 神山町の改革はIT(情報技術)スキルのある個人やベンチャー企業が主導し、保守的な地域住民が影響され夢を実現し始めた。将来は一般住民が新しい動きを起こしやすい時代が来る。

 岩坪 人が主役の時代が来る。熟練者の技術などがデジタル化されるとデータが新たな経済価値を生む可能性もある。地方創生にICTが役立つ理由は「つながりやすさ」だろう。

 坂井 今後、社会課題にSociety5.0はどう対応するのか。

 久間 収益を生む産業創出、安全安心で活力のある社会の実現に尽きる。農研機構では2019年からスマート農業加速化実証プロジェクト等に取り組む。将来はエネルギーを有効活用したアグリビジネスの発展もある。

 柏木 高齢者など様々な人々がゆとりを味わえるようなスマートハウスは効果がある。例えばUR都市機構が提供する良質な団地などから、これを面として広げることも考えられる。都市計画とエネルギーシステム構築の一体化の政策も大事だ。

 大南 地方創生は継続すべきだ。地方自治体は地域差が大きいため、きめ細かな対応が重要。

 岩坪 関連データを取得するための仕掛けづくりも必要。

 坂井 多様な主体が連携して人が主役のまちづくりの展開が求められている。

主催:日本経済新聞社  後援:内閣府  協賛:UR都市機構

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