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クックパッドが「世界で戦う」ためのシステム刷新で変えたこと

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 同社では、基幹系システムを見ても、マーケティング、営業支援(SFA)、顧客管理(CRM)それぞれに個別のシステムが使われ、人事・会計においてもそれぞれ複数のシステムが使われている状況だった。国内で業務を拡大してきたクックパッドの歴史の中で、各部門がそれぞれの業務に適したシステムを導入してきた結果だ。

 中野氏は、「刷新前の図をそれぞれの部門の責任者に見せても、『おかしい』という意見が出てこないのです。社内の情報システムが個別最適に陥って、分散・分断されてまったく連携できていない状況であることにすら気づかない状況でした」と振り返る。

 その一つの例が「社員マスター」だった。企業の社員番号や社員の氏名といった基本情報を記録したデータベースであるが全社で一本化されておらず、システムごとの連携もとれていない。連携の必要があると、人手で修正するような状況だった。「これでは社員数すら正確にわからないですし、誰がどこでどのような仕事をしているかも把握できません。こんな状況では、グローバル展開したとき、経営陣としても正しい判断ができるわけがありませんでした」(同)。

 現場においても組織の切れ目がプロセスの切れ目になり、部分最適になってしまっていた。「これでは海外にスケールすることはできません。全体最適で仕組み化することが必要だと訴えました」(同)。

システム刷新について三つの目標を提示

 中野氏はシステム刷新の目標をシンプルに提示することにした。具体的には三つ示したという。「一つ目は『グローバル展開への対応』で、海外でも国内でも同じ仕組みでオペレーションできるようにすることです。二つ目は、『ワークスタイル、ダイバーシティーへの対応』です。グローバル展開すると国籍も人種も異なる従業員が働くダイバーシティー環境になります。また、時差がある多地点で業務を行うようになるため、多様なワークスタイルに対応できなければなりません。三つ目は『プロジェクト制への対応』です。課題解決型の業務を行うためには、プロジェクトチームのような流動的な組織体への対応が求められます」。

 中野氏は、グローバルの多国籍企業のシステムをリサーチし、これらの三つを設定した。グローバルで成功している企業の共通点として、全世界共通のシステム連携基盤を持ち、それをクラウド上に構築するという姿である。北米から導入が進んだ形態であり、ヨーロッパ企業でもここ5年ほどで全世界共通システムの導入が一般化していると分析した。

 「国内では、社内情報システムをクラウド上へ移行することについて、いまだに抵抗感を覚える企業が多いようですが、グローバルでスケールするためにはクラウドを使わないと対応が間に合わないのが現実です。さらに1年半といった期間でシステム移行するには、AWS(アマゾン・ウエブ・サービス)などのクラウド基盤上に独自システムを構築するスタイルも現実的ではなく、クラウド上でアプリケーションを提供するSaaS(サース、ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やそれに準じるPaaS(パース、プラットフォーム・アズ・ア・サービス)しか選択肢はありませんでした」

 一方で、システム刷新のゴールも三つ定めた。それが「統合・連携」「自動化・拡張」「可視化・標準化」である。「統合・連携とは「システムはまとめられるものはまとめて、つなげられるものはつなぎ、少ない人数で対応できるようにすることです。システム自体をシンプルにすることが必要です」と中野氏は説明する。自動化・拡張とは、機械でできることは人手でやらないようにすると同時に、事業規模に応じてスケールできるようにすることだ。可視化・標準化とは、正しい情報を基に経営判断ができるようにすることを指す。

 これら目標とゴールに向けて、中野氏は多数の分散・分断していた社内情報システムを、五つのシステムが統合・連携する姿へ刷新した。同時並行で複数のシステムを刷新するプロジェクトで困難も多かったという。「当初は担当者が1人だったため、プロジェクトを進行させながら人材を採用し、人が採れなかったらどうしようと気をもんだこともありました。しかし、なんとか間に合わせることができました」(中野氏)。

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