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競争率56倍、写実絵画の底知れぬ人気 忙しいビジネスパーソンのためのアート講座(4)

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 競争率56倍――。「写実絵画」の山本大貴(36)作品に付けられた数字だ。昨年末に日本橋三越本店で開いた「山本大貴 油彩画展」での新作13点は、どれもが希望者多数のため会場内での抽選販売となった。デジタル技術を超えて、よりリアルに現実を描く写実絵画のブームが美術界で続いている。中でも山本は、今最も作品を入手しにくい画家の1人といわれる。にも関わらず熱心なコレクターが増え続ける理由は、鑑賞か投資か、あるいはその両方か。現在、東京都中央区の「コレド室町3」にある「ちばぎんひまわりギャラリー」で特別展を開催中だ(20日まで)。

「映画を制作するように絵画を」

 写実絵画の世界は昨年、天皇・皇后両陛下の即位後初めての肖像画を、第一人者の野田弘志が手掛けたことで関心を集めた。その歴史をたどればルネサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチ以前にまで遡るという。国内では明治期に活躍した日本最初の洋画家・高橋由一に始まり、20世紀にかけては岸田劉生、小磯良平といった西洋画の巨匠らに受け継がれてきた。

 マーケットとしての写実絵画は、近年はバブル崩壊以降にじわり存在感を示し始めたという。主流である抽象画などの現代アートとは対極の立ち位置。しかし流行の移り変わりが激しい現代アートに疲れた一部のコレクターらが写実絵画に移ってきたという。2010年には、千葉市に写実絵画を専門とするホキ美術館も開館した。

 山本は単なる精密技巧だけでなく、絵画自体にも短編映画のようにストーリー性を盛り込もうとする若手・中堅層の旗手だ。「アートオブブセッション」の出川博一社長は「21世紀前半の日本を代表する画家の1人になるだろう」と高く評価する。

 ただ50~60倍という競争率はいかにも常識外れ。需要と供給が合っていない証拠でもある。写実絵画は技法的に緻密で繊細な描画が欠かせないため、充実期に入った山本でも1年間で20~30作品が限界だろう。画廊「新生堂」の畑中昭彦社長は「現在の価格(10号作品で80万円)にかなりの伸びしろがある」と話す。昨年の個展会場でも「10年たてば価格が倍以上にもなる」といった、遠慮のない声もささやかれていた。

 「購入してすぐオークションに出すのではなく、手元に置くコレクターが多いようだ」と畑中社長。他方、一部の愛好家らから持て囃(はや)されるだけでは、画業の幅が狭まってしまう。「ちばぎんひまわりギャラリー」での展示は、一般のビジネスパーソンにも広く鑑賞されることが狙いだ。山本に抱負を聞いた。

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