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シニアの頑張りは若手の迷惑?「古い」と言われないための対策 トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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「加齢による自覚のないミスの多発」などには注意する

 その上で意識して注意すべきことはある。若い人が迷惑に感じるシニアの仕事ぶりのなかに「加齢による自覚のないミスの多発」のようなものがあるためだ。

 最近、あるところで60歳のベテランのミスが増えて、周囲が困っているという話を聞いた。以前はそれほどミスがなかったので、加齢とともに、注意力が低下したのか、思い込みが強くなっただろう。いずれにせよ若手は、「ミスが多く、カバーするのが大変な人だ」と感じているという。

 そのベテラン自身は、「私は60代になりましたが、気力も体力も十分です!」と張り切っているそうだが、若手は「気力と体力以外が問題なんだよなぁ」とつぶやいているとのことである。

 この話で気になったのは、このベテランに対して、ミスの多発という課題を指摘する人が周囲に誰もいないことである。本人が張り切っている分、ねずみが猫に鈴をつけるような状態になっており、若手の人がフィードバックするのを躊躇するのだろう。

 こういうとき、周囲が率直に課題を指摘してくれるかどうかは、もっと前の段階からの人間関係による。要は若手に「指摘しやすい相手」と思われるかどうかだ。どんな年齢になっても、周囲のフィードバックに耳を傾け、いったんは受け止める度量があると思われなければ誰も何も言ってくれない。

 「あの人に課題を指摘しても、反論するだけだもんな」「もっと良い方法を教えても、言うこと聴くわけないもんね、言うだけ無駄」と思われるような関係が出来上がってしまうと、年齢を重ねるほど、より一層誰も何も言わなくなる。

 この場合の対策は、上司をはじめとして周囲が期待していることを感じとり、実際にきちんとヒアリングもして、自分の言動が、その期待に沿っているかどうかを周囲に時々確認することだ。これらができていれば「やりづらい」「迷惑だ」とは思われないものではないか。

 「私に期待していることを教えてください」と「私はその期待に沿った働きをしていますか?」の二つを尋ね、周囲の言葉に真摯に耳を傾ける姿勢があれば、「余計なことはしないでおとなしくしていてください」という若手も少ないはずだ(よほど余裕がある企業でない限り)。

 今年も始まったばかり。上司との面談でも上記のことをまずは私も聞いてみることにする。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 本文中に紹介した例、「気力体力は十分!」と張り切っているシニアのミス多発といったケース、上司はできるだけ早めに指摘してほしいと思う。シニア自身はなかなか気づかない。なぜか?これは年齢に関係なく、以下の法則が成り立つからだ。

 「人は、他者のやってしまったこと(失敗とかミスとか)は、その人自身に原因があると思いやすく、自分のやったことは、外部要因があると思いやすい」

 たとえば、遅刻した人に対して、他者については、「あの人、時間にルーズだよね」と思いやすいが、自分が遅刻した場合は、「今日は、普段より電車が遅延していたので、仕方ない」などと理由づけをしやすいということだ。

 シニアのミスも、ミスをしたこと自体は自覚しているかもしれないが、「今回は、処理する分量が多かったから仕方ない」などと外部に要因があると解釈している可能性がある。

 そこを事実ベースで指摘するのは、上司の役割である。

 たとえば「この書類にミスが4カ所あって、修正してもらったものにもまだ2カ所残っています。ミスをゼロにして提出するようにしてほしい」というように事実だけを伝えるのである。

 このとき、「歳のせいで注意力が散漫になっているんじゃないですか?」などと自分の考えを追加せず、ただ「事実」だけをフィードバックする。その上でどう対処するかは、一緒に考えていけばよいだろう。
田中淳子(たなかじゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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