日本の「中国人」社会

急増する日本に住む中国人、高知県民とほぼ同数に ジャーナリスト 中島恵

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 オープン当初から、日本の中国人社会の間で情報が駆け巡ったせいか、周辺の留学生らが押し寄せ、連日行列ができていた。その噂を聞きつけて、私もオープンから1カ月後に足を運んでみたのだが、そこはまさしく"中国"だった。

 近隣を歩くと、『張亮麻辣湯』『本格熊猫』『蘭州牛肉麺』など、以前は見かけなかった中国語の看板が目立つ。いずれも2017年以降にオープンした料理店だ。

 おそらく王氏のような人が、日本に増え続ける"同胞"の需要を見込んで開店したのだろう。取材を進めていくにつれ、中国人による中華料理店が東京に増えているのには、他に私が想像もしていなかった理由があった。

急カーブで増え続ける中国人たち

 高田馬場だけではない。今、中国人コミュニティが日本社会にすっぽり入り込んでいるかのような地域がいくつもできている。

 東京でいえば、新宿、池袋、亀戸、錦糸町、葛西あたり。大阪では西成地区など。これらの街のある一角に足を踏み入れると、自分のほうが異邦人になったかのような感覚にとらわれる。中でも象徴的なのは埼玉県川口市と神奈川県横浜市だ。

 人口約60万人の川口市には約2万人の中国人が住み、その多くが西川口と蕨(わらび)というJRの駅周辺に集中している。自治体別の在留中国人数では、川口市は全国で第5位。東京都、大阪市などの大都市を除くと、川口市の多さはひときわ目立つ。

 西川口には新興のミニ中華街ができ上がっており、蕨には芝園団地という中国人率が圧倒的に高い集合住宅もある。

 一方、横浜市にある横浜中華街は神戸や長崎と並び「日本三大中華街」と呼ばれ、古くから"中国人比率"が高かった。そこには老華僑(1978年の中国の改革・開放以前に来日した中国人)が住み、何世代にもわたって中華料理店を営んできた煌(きら)びやかなストリートがある。いわば観光客向けのチャイナタウンだ。

 しかし、そこからわずか数キロ離れた横浜市南区にある"ごく普通の住宅地"には、近年になって新たに流入してきた若い世代の中国人が集住している。その学区内にある小学校は、児童の約4割が中国人なのだという。その学校を訪れ、休み時間に廊下を歩くと、元気よく響く児童たちの声の多くが中国語だった。

 なぜ、この二つの地区に中国人が集まるようになったのか。近年、とくに2000年以降、日本に住む中国人の数は急カーブで増え続けている。総務省の統計によると、2017年末時点で、約73万人(台湾・香港を除く)に上り、在日外国人全体(約256万人)の約3分の1を占める。

 短期や公務での滞在者などを含めると約87万人、日本国籍の取得者(帰化者)などを合わせると約97万人と、その数は100万人に迫る。2000年は約32万人だったが、3倍近くに増加した。実に、日本に住む120人に一人が「中国人」なのである。

 ちなみに全国45位の高知県の人口は、約72万8000人で、中国人とほぼ同数。46位の島根県(約69万人)、47位の鳥取県(約57万人)よりも多い。これほど多くの中国人が日本に住んでいるのだ。

 確かに、東京や名古屋、大阪などの大都市にかぎらず、地方都市でも、大学のキャンパスで、観光地で、飲食店で、中国人に出会ったという人は少なくないはずだ。彼らは私たちと同じようにこの国で働き、旅をし、買い物をして"普通に"暮らしている。

(つづく)

中島恵 著 『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社、2018年)、「プロローグ」から
中島恵(なかじま・けい)
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリスト。中国、香港、アジア各国のビジネス事情、社会事情などを執筆している。著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』『なぜ中国人は財布を持たないのか』(ともに日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論社)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?』『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(ともにプレジデント社)などがある。

キーワード:経営層、管理職、プレーヤー、経営、営業、国際情勢

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