NEXT GENERATION BANK

金融システムに入れていない15億人の人びとのために マシュー・ボーハン|Matthew Bohan|Bill & Melinda Gates Foundation

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<FIN/SUM2018 注目の登壇者インタビュー>

 ビル・ゲイツとその妻のメリンダが立ち上げたビル&メリンダ・ゲイツ財団で、「金融包摂」をテーマとしたプロジェクトを扱うのが、米国のマシュー・ボーハンだ。15億人を「包摂」するためのサービスや技術を日々探し求める彼はいま、どんなサービスに注目しているのだろうか。

 自分はもともとはテクノロジストとして働いてきて、外部のテクノロジーコンサルタントとしてゲイツ財団と関わるようになりました。テクノロジーがどういうインパクトを人びとにもたらすのか、それを検証して、有益と思えるものがあったら財団として投資します。「インパクトインベスター」という役割になるかと思います。わたしが担当しているのは、ゲイツ財団が扱っている28のプログラムのうち「ファイナンシャル・インクルージョン」(金融包摂)に関わる部分で、金融システムへのアクセスのない15億の人たちをどう包摂するのか、というのがミッションです。

 包摂の基盤になるのは、まず何よりもあらゆる人が「ペイメント」を行うことができるようになることです。モバイル決済というと、とかくP2Pのやり取りが取りざたされますが、それ以前に、まずお店で何かを買ったり、公共料金を支払ったり、税金を納めたり、そういうペイメントを可能にすることのほうが先決です。

 それを大きなスケールで実現するものとして、わたしは「Mojaloop」というプロジェクトを面白いと思っています。これは、ファイナンシャルサービスに特化したオープンソースソフトウェアで、企業も行政機関も使うことができます。これを使うことで、プレイヤー間のインターオペラビリティを実現することが可能になります。こうしたソフトが、これからの金融の基盤のインフラになっていくのです。

 面白いのは、このプロジェクトは必ずしも開発途上国のためにつくられたものではなく、実際最初にこれを使ったのは、アメリカの信用組合でした。ファイナンシャル・インクルージョンということを考える上で重要なのは、実はこのことなのです。つまり、先進国や裕福な人に向けたサービスがあり、その一方で途上国や貧しい人に向けたサービスがあるといったように、複数のシステムが存在してはいけないのです。

 ゲイツ財団では、「金融システムはみんなのものでなくてはならない」という原則を信じています。ひとつのシステムのなかに包摂することが、包摂ということの本来的な意味なのです。アメリカにも、アフリカやインドと似たような状況があり、金融システムへのアクセスの道が閉ざされている人がたくさんいます。先進国でも、途上国と同じような問題を抱えているのです。

 キャッシュレスということについて、ゲイツ財団はそれを強く支持するといった立場は取っていませんが、キャッシュレスになることで行政のコストが下がることについては賛成です。とはいえ、キャッシュにはキャッシュのメリットもありますから、「キャッシュライト」、すなわちキャッシュが少なめの社会が望ましいのではないかと思います。また暗号通貨についてはインクルージョンを実現するという意味では、さほど有効ではないのではないかと思っています。

(『NEXT GENERATION BANK 次世代銀行は世界をこう変える』より転載)

NEXT GENERATION BANK 次世代銀行は世界をこう変える
若林恵・責任編集
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1,200円(本体価格)+税

フィンテックの勃興、仮想通貨や電子通貨の広まり、キャッシュレス化の波によって、猛然とデジタル化・モバイル化が押し進められ、さらに、マイナス金利、低成長、働き方改革などによって、産業、経済のルールまでもが抜本的に見直しを迫られてもいる。この変化の混乱のど真ん中にあって、「金融」の世界はいったい何を指針に、どこへ向けて、どう自らを刷新しうるのか? これからの新しい社会の「金融」を担うべき新しい機関=次世代銀行とは、いかなるものなのか? お金とテクノロジーと社会が織りなす社会変革の壮大なシナリオを、ダグラス・ラシュコフ、デイビッド・バーチ、武邑光裕、山本龍彦、池田純一、出井伸之、tofubeatsから、現役メガバンク取締役まで、時代を牽引する識者とともに、『さよなら未来』の著者でWIRED前編集長の若林恵が考えた、次世代ビジネスマン必読の「次世代銀行論」!  <Amazonで購入する>

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