「機密情報.csv」を完全に削除したはずなのに……
次はウインドウズで「ファイルの完全削除」を実行する。USBメモリー上の「機密情報.csv」を選択して、シフトキーとデリートキーを同時に押す。ウインドウズのエクスプローラーではファイルが完全に消えたように見える。
しかし直後に、専用ツールで確認したところ……、どうだろう。「機密情報.csv」のファイル名も中身も、淡色表示されているものの確認ができる!ウインドウズからは見えないものの、本当は消えていないのでは!?
この状態について関氏が解説してくれた。「ウインドウズで『ファイルの完全削除』を実行しても、ウインドウズが参照している「ファイルの目次」に、『削除したよ』という印をつけるだけなのです。ですので、その印とは無関係にデータを表示できる専用ツールを使うと、削除したはずのファイル名も、ファイルの中身も見えます」
別のファイルで上書きすればデータは消えるのか?
筆者が「その状態のUSBメモリーへ別のファイルをコピーすれば、機密情報.csvのデータが、別のファイルのデータで上書きされ、機密情報.csvのデータは消えるのでは?」と尋ねたところ、関氏は「では、やってみましょう」と言う。
関氏が用意してくれたのは、「新しいファイル.txt」という名前のファイルだ。「0123456789ABCDEF」という16文字を289個並べて書き込んだもので、全部で4625バイトある(単純な掛け算の結果より、1バイト多いのは、ファイルの終了を表す特殊な文字を含むため)。この「新しいファイル.txt」をパソコンからUSBメモリーへコピーした。
「まっさらのUSBメモリーに一つだけファイルをコピーして、それを完全削除した後、別のファイルをコピーすると、最初のファイル(ここでは『機密情報.csv』)があった場所に新しいファイル(ここでは『新しいファイル.txt』)が書き込まれます」と関氏は説明する。
コピーしたあと、関氏は専用ツールで「機密情報.csv」があった場所を選択した。先頭から領域を表示していくと、「新しいファイル.txt」の内容「0123456789ABCDEF」が繰り返し出てくるだけで、個人情報は消えている。また、「0123456789ABCDEF」が終わったあとの領域は「ゼロ」で埋め尽くされていた。