これらの現象は、パソコンにおける「ファイル管理」の仕組みに原因があるが、まずは「ファイルの完全削除」を行った場合にデータが残っている様子を見せてもらうことにした。なお今回は、削除したファイルのデータを表示するために、フォレンジックの専用ツールを使う。本来の使い方ではないが、情報漏洩に対する注意を喚起するため、実験用の架空データを表示する作業に限定して使った。
「ファイル完全削除」の後もデータは残る
今回の体験の流れは以下の通りだ。
・ 初期化したUSBメモリーに、架空の個人情報5000件を入れたファイル「機密情報.csv」をコピー
・ 「機密情報.csv」に対して「ファイルの完全削除」を実行
・ USBメモリーに、別のファイル「新しいファイル.txt」をコピー
・ 「機密情報.csv」のデータがほとんど残っていることを確認
順に詳しくお伝えしよう。
まず、初期化したUSBメモリーの情報をウインドウズの標準機能で確認する。
初期化して中身が空の状態のUSBメモリーには基本的に何もない。パソコンで見ると一部が使用されているが、これはウインドウズが使っている領域である。ここでは「FAT32」というよく使われる形式でUSBメモリーを初期化している。
このUSBメモリーへ、あらかじめ用意した「機密情報.csv」という名前のファイルをパソコンからコピーする。個人情報ジェネレーターというソフトウエアで自動作成した架空の個人情報(文字情報)が5000件入っており、ファイルの大きさは535Kバイトである。すべての氏名や住所などは、実在の個人とは関係ない。
このUSBメモリーの中身を、専用ツールで確認する。「機密情報.csv」をディスクからUSBメモリーにコピーしたあと、専用ツールを実行すると、USBメモリーの中に「機密情報.csv」が確かに保存されていることが確認できる。もちろん、削除前なのでウインドウズの「メモ帳」というツールなどからもファイルの内容は確認できる。