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「機密費外交」が示す日中関係の虚実 「アジアを読む」 (1)  井上寿一・学習院大学学長に聞く

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次代リーダーに求められる専門性とリアリズム

 ――対中外交を改革していく上でも新しいリーダーシップが求められますね。

 変動期には高度な専門性を備えた現実主義者が優れたリーダーの必要条件であると考えています。日本人がイメージするトップは「細かい知識はないが、人をまとめる力がある」とか「理念と方向性だけ示す」といった大局観だけを求めがちですが、高度情報化が進んだ現代では通用しないでしょう。その場の思いつきで発言されると国の進路が誤りかねないですから。

 ある分野で専門性を高めていって、それに基づいたリアリズムで国民に不評であろうと、この方針で進むといったリーダーシップが必要です。この決定が正しいという信念を、自分の専門知識で裏付けできることが大事でしょう。

 日本の近代史でいえば、原敬首相(1856~1921)は代表的なケースでしょう。生前も現在も称賛と批判のどちらも多い政治家ですが、新聞記者、外交官と専門性を積んだ上で政界に出ました。その経験を生かして政党内閣が当たり前ではなかった当時に政党政治の時代を予見し実現させました。

 戦後の吉田茂(1878~1967)も外交官としての専門性を生かして、平和憲法と日米安全保障条約という一見矛盾するような態勢を同時に受け入れました。結局、この戦後体制で大多数の国民が恩恵を受けたのですが、吉田は大衆に迎合したのではなく、左右両勢力の反対を押し切って自分の政策を貫きました。

 ポピュリズム全盛の時代だからこそ、今後のリーダーに求めたいのは人々が共感できる言葉です。専門性とリアリズムに裏打ちされたリーダーがある切実な問題意識を持っているならば解決するための決意や政策をその人固有の言葉で語りかけるのが必要になっています。

 (聞き手は松本治人)

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