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「機密費外交」が示す日中関係の虚実 「アジアを読む」 (1)  井上寿一・学習院大学学長に聞く

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現在の中国は1930年代の日本と酷似

 ――機密費外交が得意な国、苦手な国がありそうです。

 日中戦争が勃発した後の中国の、米国における広報外交は効果的でした。一方的な被害者像を米国民に植え付けることに成功しました。東アジアにおける米国も機密費の多額さ、拠点の多さ、情報収集力の高さで一頭地を抜いていました。逆に日本は現在に至るも苦手な方でしょうね。

 ――大国化への野心、増大する経済力、遠慮する近隣諸国、激化する米国との摩擦――。現在の中国と1930年代の日本とは共通する点が少なくありません。中国の進める「一帯一路」はかつての日本の「大アジア主義」を連想させます。台頭を続ける中国と向き合うにはどうすれば良いでしょうか。

 満州事変後に外交関係の修復を模索したのは「親日派」と外務省による日中両政府を横断する連携の動きでした。今日の日中関係に示唆するのは信頼醸成の外交ルートの再構築です。正規の外交ルートのほか民間外交も重要です。当時も今も中国政府内に存在する複数の外交路線を見極める必要があります。

 中国は大国です。多国間協調の中での日中関係が重要です。2国間レベルでの対中外交は限界があり、軍拡と海洋進出を続ける中国に対して日米同盟を基礎とする多国間安保のネットワーク構築を具体化させるべきです。

 客観的にみれば、軍事・経済大国の中国に対して日本が劣位に置かれているのは明らかです。現状は1930年代の日中関係が反転しています。今日の中国が民主化運動を経験しながらも権威主義体制の国家になっているのは、戦前の日本が大正デモクラシーを経ながら非政党内閣の国になった事と共通しています。

 戦前の日本は、海外から日本がどう見られているかを知る努力に欠けていました。中国のナショナリズムや地政学的な立場を相手の側に立って理解することが不十分でした。中国が戦前の日本化に向かっているとすれば中国理解も進みます。歴史的に発想を得た多角的な中国観が、柔軟な外交を可能にするでしょう。

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