天下人たちのマネジメント術

大宰相・吉田茂の「負の遺産」と次の10年 細谷雄一・慶応義塾大教授に聞く(下)

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現在の中国、1950年代のソ連と状況が似る

 ――日本は今後も国際主義に沿って行動しなければなりませんが、時代によって国際社会の構造は代わります。これから10年間をどうみますか。

 19世紀は「パックス・ブリタニカ=英国の平和」の時代、20世紀は「英米の平和」の時代でした。21世紀はヨーロッパ中心主義が終焉した世紀となるでしょう。現在は大西洋中心から太平洋中心に移行する過渡期とみています。今後可能性があるのは「中国の平和」か、「米中の平和」、あるいは「米国の平和」ですが、当面は「米国の平和」が続くと予測します。中国が国際規範となっていくのは現時点では難しいでしょう。

 ――中国共産党の中央対外連絡部が主催するシンポジウムにも招かれるなど、たびたび中国側と意見を交換されています。経済規模では2032年に中国は米国を追い抜くとの分析もあります。

 確かに中国には、世界のリーダーとなる意志が感じられます。しかし具体的に実現していく能力と手段を、模索している段階です。米トランプ政権の誕生で、外交シナリオがおかしくなっている印象を受けます。中国の狙いは、米国の作った国際秩序を修正していくことでした。ところがトランプ大統領自身が米国の国際規範を放棄しようとしています。しかもリーダーシップの空白を中国が埋めようとしても、貿易戦争などを仕掛けて認めようとはしません。

 現在の中国は、1950年代のソ連(現ロシア)に状況が似ています。国際的な潮流は社会主義に流れていました。しかしソ連は自国を維持するのに大きな力を費やしてしまって国際秩序の形成には十分な貢献ができませんでした。中国の対外政策は国内政策の延長です。今後は国内統治が難しくなると予想されています。

 ――国際的なポピュリズムの隆盛をどうみますか。

 吉田や幣原喜重郎、芦田均にみるように国際主義とナショナリズムは両立します。共通するのは理性や合理性です。しかし国際主義とポピュリズムは調和が不可能です。敵か味方かの選択に関して、合理的な交渉が通じません。国際主義の衰退を懸念しています。日本の将来は、国際主義を抱擁することなしには描くことができませんので。

 (聞き手は松本治人)

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