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気の合わない?「日米」同盟が続く理由 細谷雄一・慶応義塾大教授に聞く(中)

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 米中の対立が先鋭化している。しかし第1次世界大戦が終結したちょうど100年前は、米国にとって最強の宿敵は中国ではなく、日本だった。第1次世界大戦というヨーロッパ大陸の「内戦」で疲弊した欧州各国に代わり、日米は中国市場を巡って激しいつば競り合いを演じた。広大で強大で多様性が特徴の米国は、日本人にとって大きな脅威だっただろう。効率性と規律性に優れ全くアジア的でない極東の日本は、米国人に不気味に映ったはずだ。気の合わない宿敵同士だったはずの日米の同盟が約70年も続いている理由はどこにあるのか。「自主独立とは何か」(新潮選書)を著した細谷雄一・慶応義塾大教授に戦後史の視点から聞いた。

真珠湾攻撃が180度変えた米国の安全保障観

 ――第2次世界大戦は米国の安全保障観をガラリ変えたとされています。

 米国にとって衝撃的だったのは、1941年の日本軍による真珠湾攻撃でした。アメリカ建国以来、太平洋と大西洋の2つの広大な海洋に包まれた米国にとって「平和と安全」とは「神が恵んでくれる慈悲(=スペシャル・プロビデンス)」だったのです。アメリカ大陸とヨーロッパ大陸の相互不干渉を唱えた19世紀のモンロー主義、20世紀の孤立主義は、欧州の覇権争いに加わらないことが米国民と国土の安全を保証する政策であるという考えでした。

 しかし日本軍の奇襲成功は、楽観的な国家安全保障観を崩壊させました。集団安全保障を考えない孤立主義のせいで、軍事的な攻撃を受けるかも知れないということが、現実に起きました。真珠湾攻撃は「ミュンヘンの宥和(ゆうわ)」と並んで、米国の安全保障政策上の基本的な教訓となりました。仮想敵国に対する普段の警戒と、平時における強力な軍事態勢の保持が必要であることを、米国民に教えたのです。

 太平洋戦争の勝利は、米国の立場の正しさを証明したものとして、グローバルな外交を展開する自信を米国民に与えたと同時に、十分な軍事力を保持することが米国民の安全を守るために死活的な要因であることを認識させました。

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