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「反米」「親米」にこだわる機会損失 細谷雄一・慶応大教授に聞く(上)

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 史上初の米朝トップ会談など、多彩な首脳外交が繰り広げられた2018年もあと1カ月。国際政治の中心は、今年も相変わらず米国とトランプ大統領だった。日本経済にとっての波乱要因である米中貿易戦争は、いまだに決着点が見えない。本格化する日ロ平和条約と北方領土の返還交渉にも在日米軍の存在が絡む。しかし米国の政治スタンスを注目するだけで複雑な国際情勢を判断するのは今後も有効だろうか。「自主独立とは何か」(新潮選書)を著した細谷雄一・慶応義塾大教授は、戦後史を読み直しながら「親米・反米」にとらわれずに広く国際主義からの利益追求を説く。

トランプ大統領と鳩山元首相との共通項

 ――自由主義や民主主義の価値観を共有する同盟国の米国は、これまで日本には圧倒的な存在でした。反権力の立場からの反米主義も、常に人々へ問題を提起してきました。

 「親米」か「反米」かという二分法で現在と過去を眺め、対米関係のみに光を当てるのは、あまりに多くの重要な事実を看過してしまいます。視野狭さくに陥り、機会損失の恐れが生じます。戦後初期の時代に米国の国力は他国を圧倒していました。とはいえその力は限界があったのです。中国の共産化阻止や朝鮮戦争の勝利を米国は達成できませんでした。21世紀の今日では、日米関係に限定せずより広く世界を眺めた複眼的な思考が求められています。

 現在でも対米関係は大きな位置を占めます。しかし日本の対外貿易に占める米国の割合は、約16%に過ぎません。そもそも日本経済の貿易依存度自体が約25%と低いのです。他方ロシアは約37%、中国は約31%を占めています。東南アジア諸国連合(ASEAN)で信頼度が高い国として好感度が高いのは日本です。

 ――しかし国際政治の面で日本は米国に依存しているとの指摘が少なくありません。鳩山由紀夫元首相らは日本が真の意味で独立した国ではないと「対米従属」からの脱却を唱えています。

 外国に自国が操作されているという「陰謀論」は、実はどの国にでもみられます。トランプ米大統領の日本批判は、貿易面で日本が狡猾(こうかつ)に米国経済を支配してきたというものです。トランプ大統領の対日批判と鳩山元首相の対米批判には、共通の精神構造が読み取れます。独善的なナショナリズムと相手への不信感、感情や印象に依拠した不正確なデータの選択……などです。

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