勝ち抜く中小経営への強化書

注目されるフリーランス、その光と影とは? 日本政策金融公庫総合研究所 中小企業研究第一グループリーダー 藤井 辰紀

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「仕事も生活も」を実現する働き方

 脚光を浴びるフリーランスも、決して万能ではありません。1人で稼働しているため、企業としての競争力は必ずしも高くはありません。現状維持を望む人も多く、雇用創出効果や成長力は限定的です。個人的な動機や得意分野をもとに開業しているケースが多いため、一代限りで廃業するつもりの人が少なくありません。研修制度が用意され、昇進に伴い収入が増える勤務者と違い、腕を磨かなければ収入は増えていきません。自身の病気やけが、取引先からの仕事の打ち切りなど、収入が突然途絶えるリスクもあります。

 確かに、不当な取引条件を押しつけられたり、支払遅延の被害に遭ったりすることのないよう、公平なルールや一定のセーフティーネットが整備される必要はあります。ただ、保護を強化すれば安定性は増すかもしれませんが、その対象を線引きするルールに縛られる分、ビジネスとしての自律性も損なわれてしまいます。保護のルールづくりにおいては、安定性と自律性のバランスに一定の配慮が必要でしょう。フリーランスの人たちは、ビジネス上の不安定さや苦労をわかったうえでなお、その道を積極的に選び、結果として仕事や生活に満足しています。繰り返しになりますが、勤務者や企業経営者に比べて制約が少なく、自分の意思で未来を選べるのがフリーランスの最大の魅力です。

 フリーランスか勤務者か。仕事か生活か。これらの問いに対し、どちらか1つだけを選ばなければならない不自由な時代は終わりを迎えつつあります。フリーランスとは、単なる働き方の1形態ではありません。大げさな言い方かもしれませんが、仕事も生活もあきらめない時代の、新しい生き方なのです。

 ※本稿は、日本政策金融公庫総合研究所編『日本政策金融公庫調査月報』2018年7月号所収のリポート「なぜ今、フリーランスなのか―雇われずに働くという選択―」の一部を抜粋・再編集したものです。(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/tyousa_gttupou_1807.pdf)
藤井 辰紀(ふじい たつのり)
日本政策金融公庫総合研究所 中小企業研究第一グループリーダー。1998年早稲田大学政治経済学部卒業後、国民金融公庫(現・日本政策金融公庫)入庫。現在、中小企業の経営や景況に関する調査・研究に従事。最近の論文に「創業の構造変化と新たな動き―マイクロアントレプレナーの広がり―」(『日本政策金融公庫調査月報』2017年1月号)、「『経営最前線』の30年から学ぶ―時代を生き抜く力とは―」(『日本政策金融公庫調査月報』2018年9月号)などがある。

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