泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

Jリーグと世界のビッグクラブの差は埋まるか?(前編) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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Jリーグクラブの「経営」を支えるスポンサーと入場料

 もっとも、現時点では「ダゾーン」の放映権収入を軸に、Jリーグの各クラブがビジネスモデルを変革しているとまでは言い難い。2018年度からJ1の上位チームが理念強化配分金の恩恵を受け始めるのは間違いないが、基本的に上位、それも1位のクラブチームに重点的に支給されるため、幅広いクラブの収益構成を変えるほどのインパクトはない。実際にJリーグを構成する主要クラブの収益構成を見ていこう。

 下図は、営業収益が多い上位5チームの収益構成を示したものである。5クラブすべてで、広告料収入の比率が最も高く、ヴィッセル神戸は突出して高い。Jリーグでは、営業収益額で上位のクラブといえども現時点ではスポンサーによる広告料収入が主体である。

 次いで高いのが入場料収入の比率で、これは後述する海外ビッグクラブの収益構成と比較したときの目立つ違いでもある。

 下図に、入場料収入と各クラブチームが本拠地とするスタジアムの収容人数を示した。なお、本拠地を2カ所持つクラブチームに関しては収容人数が多いほうのスタジアムのものを示している。

 これを見ると、営業収益でJ1ナンバー1である浦和レッズの入場料収入が突出して大きい。これは、浦和レッズがより多くのサポーターをひきつけているのはもちろんのこと、そもそもスタジアムの収容人数が大きいことが理由として挙げられる。浦和レッズの本拠地である埼玉スタジアム2002は収容人数が6万人を超え、横浜F・マリノスの本拠地である日産スタジアムの7.2万人に次ぐ。

 当然ながら、クラブチームにどんな人気があってもスタジアム収容人数以上の観客は望めない。入場料収入を増やすには、販売チケット単価の引き上げという選択肢もあるが、それでは需要を冷やしかねない。集客力がある程度ついてきたタイミングでスタジアムの収容人数を増加させることが、営業収益を安定させる上では必要となる。

 最近、スタジアムが建設されたケースには、ガンバ大阪のパナソニックスタジアム吹田がある。収容人数は4万人であるが、サッカー専用スタジアムとして運営される。約150億円の建設費は、スポンサー企業やサポーターなどの寄付でまかなったという[3]。2009年に話が持ち上がり、2015年10月に完成した[4]

 以前のホームスタジアムであった万博記念競技場の収容人数が2万人程度であったことからすれば、収容人数を倍近く拡大できた。2017年の入場料収入を見れば、浦和レッズに次いで第2位になっている。大阪府吹田市という立地の良さもあるが、収容人数の拡大をこなしながらもうまく運営されているケースといえる。

 以上は2017年度の収益構成であり、2018年5月のJリーグ理事会以降に支給される理念強化配分金は含まれていないが、支給されればJリーグ配分金として計上されると考えられる。2017年シーズン1位だった川崎フロンターレは2018年度に10億円が上積みされるだろう。その場合、2018年度のJリーグ配分金は入場料収入を超える可能性があるが、広告料収入を超えるほどではない。また、2017年シーズン2位の鹿島アントラーズには2018年度に4億円が支給される。2017年度のJリーグ配分金約5億円は、2018年度には約9億円になり、入場料収入と同じぐらいになるが、やはり広告料収入には及ばない。

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