泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

Jリーグと世界のビッグクラブの差は埋まるか?(前編) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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 2018年は海外のスター選手がJリーグへ久々に参加し、注目を集めた。ワールドカップ ロシア大会にスペイン代表として出場した元バルセロナFCのアンドレス・イニエスタ選手がヴィッセル神戸へ、元スペイン代表で元アトレティコ・マドリードのフェルナンド・トーレス選手がサガン鳥栖へそれぞれ加入したのは記憶に新しい。彼らが出場する試合のチケットが売り切れるなど、Jリーグは一段と活気を帯びた。

 アジアにおけるJリーグの躍進も目覚ましかった。アジア各国のクラブチームが対戦するAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2018では、鹿島アントラーズが同クラブ創設以来の悲願だった初優勝を果たしている。昨年は浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)が優勝しており、2年連続で日本のクラブチームが、アジアで最も権威のあるこの大会を制した。

 Jリーグではご存じのように、「クラブ」という組織単位によってサッカーチーム(以下、クラブチーム)が運営されている。各クラブは、Jリーグで試合を行うプロチームの運営のほか、次世代選手の育成なども含めた幅広い活動を行いつつ、収入と支出をバランスさせる「経営」が求められている。

 しかし、Jリーグのクラブを「経営」という観点でみた場合、欧州など世界のビッグクラブとの差がいまだに小さくないのも事実だ。それは一体どれくらいの差なのか。さらに今後、Jリーグのクラブが世界へ飛躍する戦略としてどのようなものが必要になるのか?今回はこのテーマについて考えてみたい。

Jリーグクラブに活気を与えた「DAZN(ダゾーン)」マネー

 2016年7月、Jリーグの運営組織である公益社団法人 日本プロサッカーリーグは、スポーツ専門のネット中継サービス「DAZN(ダゾーン)」を提供する英パフォームグループと、2017年から10年にわたる約2100億円の放映権契約を締結したと発表し、パフォームはJリーグのオフィシャルブロードキャスティングパートナーとなった[1]

 この「ダゾーン」マネーとも呼べる約2100億円もの放映権収入を原資にして、各クラブへの賞金なども増額された。Jリーグの1部リーグである「J1」で優勝したクラブチームには、「J1優勝賞金」などが支払われるが、同賞金が2017年シーズンから3億円へ増額になった(それ以前は1億円)。さらに、J1上位(1~4位)のクラブへ2018年シーズンから支給する「理念強化配分金」が新設されている。この理念強化配分金は、前年シーズンの順位で傾斜配分されて支給される。1位の場合、3年合計で15.5億円(1年後に10億円、2年後に4億円、3年後に1.5億円)である。

 たとえば、今シーズン優勝した川崎フロンターレはおおまかにいうと、J1優勝賞金3億円と理念強化配分金15.5億円の合計18.5億円を受け取ることができる。もちろん2017年、2018年シーズンと連覇を果たした川崎フロンターレはそれを連続して受け取ることができるわけである。補足となるが、J1クラブチームに均等に支払われる「J1クラブ均等配分金」が別途3.5億円ある。

 こうした放映権収入の増加を通じた増収のインパクトを理解するため、J1を構成する各クラブが公表している業績や財務内容を見てみよう。下図は、2017年度の営業収益が多い順に、各クラブの営業収益を並べたグラフである(各クラブの決算期は多少異なる)[2]。営業収益は、広告料収入、入場料収入、Jリーグ配分金、アカデミー関連収入、物販収入などからなる。

 すぐわかるように、営業収益が最も多いのは浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ)で約80億円ある。続いて、ヴィッセル神戸と鹿島アントラーズの約52億円、川崎フロンターレの約51億円、ガンバ大阪の約50億円と続く。一方、ベガルタ仙台やコンサドーレ札幌はそれぞれ約27億円だ。また、クラブによって差はあるが、18クラブを平均した営業収益は約41億円となる。つまり、リーグ優勝した場合の18.5億円は、浦和レッズにおける営業収益の約4分の1、コンサドーレ札幌の営業収益の約7割にも相当する。

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