デジタルトランスフォーメーションへの道

理想科学工業、10年越しの「思い」が進めたデータ活用

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 年賀状作成の季節になると、理想科学工業の家庭用簡易印刷機「プリントゴッコ」を思い出す人も多いだろう。1946年に謄写印刷業として創業した同社はその後インクの開発・製造を始めるなど時代とともにビジネスを変革。事務用サプライ品メーカーを経て、今や高速カラープリンター「オルフィス」、デジタル印刷機「リソグラフ」に代表される業務用印刷機器の製造・販売を事業の中心にしている。その基本にあるのは時代の変化を先取りして「世界に類のないものを作る」という開発ポリシーに基づくビジネスの創出だ。

 その理想科学工業が、デジタル化による新たなビジネスモデルの変革を目指して立ち上げたのが、データ分析プロジェクト「RABBIT(Riso Analytics By Big data Technology)」である。その目的は、プリンターといった機械の故障予測・予防保全を支援し、顧客のより良い利用環境や修理についての体験を提供するため、総合的にデータを活用することだ。

 プリンターなどの故障を検知してフィールドエンジニアが急行するという事後のトラブル対応ではもう遅い。プリンターに各種センサーを組み込み、動作に関する多様なデータをインターネット経由で収集するとともに人工知能(AI)を活用して効率的に分析。「修理のベストプラクティスの実現」「離反顧客の検知」「コミュニケーションレポートの充実」の三つを実現することで、顧客と理想科学工業の双方を「ハッピー」にすることを目指す。

 理想科学工業が主力とするプリンター市場では製品を購入した顧客に対して継続的なサプライ用品の販売で収益を上げるサプライビジネスモデルが一般的である。同社はそれをデジタル技術によって飛躍的に強化することで、既存の顧客へこれまで以上に快適な製品利用環境を提供し、同社製品の継続利用を促そうとしている。

データを早くから活用するも一定レベルにとどまる

 しかし、理想科学工業もこのプロジェクトを一朝一夕にスタートできたわけではない。情報システム部門担当者による10年越しの「思い」がなければ実現しなかっただろう。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業において、最初のハードルとして立ちはだかるのが「データの収集」である。デジタル化されたデータがない場合はもちろん、データを収集していてもバラバラで整合性が取れていない、一元的に保管できていないといったことは多い。理想科学工業ではデータを1996年から一元的に管理し、事業部門の現場担当者が分析をしていたが、さらなる変革が求められていた。

 理想科学工業 コーポレート本部 情報システム部でRABBITプロジェクトを推進してきた庄司朋子氏は「ホストコンピューターを利用していた時代は、データが必要になったときに情報システム部のメンバーが売上高の一覧表などを手作業で作っていた。しかし情報システム部の人員には限りがあり、現場の要望にすべては応えることができない。そこで多様なデータをまとめて格納し、現場の担当者が欲しいデータを自分で取り出して集計できるシステムを導入した」と振り返る。

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