電力・ガス自由化時代における再生可能エネルギーの役割

再エネ 主力電源への流れを

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■基調講演

再生可能エネルギーがもたらす様々な付加価値

CDP事務局 ジャパンディレクター PRI事務局ジャパンヘッド兼務 森澤 充世 氏

 日本はエネルギー輸入国であり、再生可能エネルギーが国内で増加すれば、日本のエネルギー自給率向上につながる。加えて分散型エネルギーシステムを構築することで災害対策にもつながる。さらには地方自治体や地域金融機関の参画により地方活性化の可能性もある。日本は省エネを進めてきたが、世界的には温室効果ガス排出量削減が重要だ。そこで排出係数の高い化石燃料を使わず、再エネを極力利用していこうという動きが世界で高まっている。事業活動で使う電力の100%を再エネで賄うイニシアチブ「RE100」に152社が加盟している。非加盟企業も加盟企業のサプライヤーであれば再エネ使用が求められる。再エネの供給が増え、そして低価格にならなければ国内生産は難しくなる。

価格低下へ研究加速を

 再エネの需要増で次世代再エネや蓄電技術改良、価格低下を探る研究開発が加速するだろう。新たな産業革命として低炭素・脱炭素技術の発明なども進んでいくと期待している。

■基調講演

RE100が当たり前になる社会を目指して

【なぜワタミグループがRE100なのか?】

ワタミファーム&エナジー 社長 兼 ワタミ 執行役員 小出 浩平 氏

 ワタミグループは1999年「美しい地球を美しいままに子どもたちに残していってあげたい」という「ワタミ環境宣言」を発表して以来、ISO14001認証取得、食品リサイクル、風力・太陽光発電などに取り組み、2018年3月にはRE100に加盟した。

 なぜRE100かというと「未来の子どものために持続可能な社会を作りたい」からだ。

美しい地球を子どもたちに

 1966年のエネルギー自給率は60%くらいだったが今は8%だ。今、できることは再生可能エネルギーによる発電量を増やし、エネルギー自給率を高めることだ。ワタミグループとしては、全国の様々な地域と連携して設備投資を行い、電力の地産地消を目指していきたい。また、FITが終わった時は環境価値もあわせ1キロワット時当たり4~5円で電気を購入する。

 抜本的解決は次世代に委ねざるを得ないかもしれないが、RE100が当たり前の社会となるよう、その第一歩となればという思いで取り組んでいる。

■パネルディスカッション

●パネリスト

山崎 琢矢 氏

松尾 康男 氏

森澤 充世 氏

小出 浩平 氏

●コーディネーター

橘川 武郎 氏

 橘川 現状をどう見るか。

 小出 太陽光パネルや風力発電、バイオマスを育てる必要がある。

 森澤 日本は太陽光パネル製造などで先行したが、今は国内での再生可能エネルギーが伸びないことで関連産業も伸びず残念だ。再エネの利用が進んでいないことで負の循環が生じている。資源エネルギー庁などが本気で電力システム改革をやれば環境先進国日本に戻れる。

 松尾 再エネの利用を最優先するドイツでは、火力は需給調整用の補完的役割で、日本は 1、2周遅れている。

 橘川 再エネ22~24%の目標は低くないか。

 山崎 エネルギーミックスでは、再エネの比率を2030年度に22~24%にすることを目安にしている。しかしこの数字はキャップではない。

 一方で、電力システム全体を進化させていかないと、24%という数字を実現し持続していくことは簡単ではない。FIT制度などによる再エネ推進施策と電力システム改革を両輪で進めなければならない。日本の電力市場は、発送電一貫、地域独占で立ち上がり、長きにわたってその状態が続いてきた。特に風力などは適地が需要地と離れるだけに、電力会社のエリアを越えた広域対応が必須だ。日本は遅れているといわれるが、20年4月の発送電分離をにらみ大きく変わりつつある。これからが勝負。

 橘川 サプライチェーンマネジメントを考えねばならない。投資の観点からどうか。

 森澤 ESG投資は将来の成長を投資家が目利きする。世界が望む再エネ新技術の研究は評価される。取引先の評価を得るうえに、再エネ利用が重要であり、また投資家の評価につながり企業も戦略に入れることが必要である。

 橘川 SAPは顧客の構造改革を手伝っているが日本でも余地がないか。

 松尾 経済性だけでない多様な判断は、ソフトウエアの投資でも多くなっている。

 橘川 日本ではRE100の加盟が少ない。

 森澤 時間と共にコミットせざるを得ないと判断するセクターの企業もあると思う。

 橘川 やりやすいのは地域密着規模の企業ではないか。

 小出 地域に希望者は多いが海外の機械が多く日本に技術基盤が少ない。産業力を何とかできれば中小企業が99%という日本で動きが起きる。

 橘川 九州電力の出力抑制が続けば主力電源化はできない。ゲームチェンジが必要だ。

 山崎 起き始めている。電力のシステムチェンジは不可欠だ。電力会社のエリアを越えた広域対応については、より一層の取り組みが必要になる。

 橘川 ビジネスモデルを変える時代ではないか。

 小出 農業、林業、エネルギーで分けず地域という横串で考える時代だ。政府に要望したい。道路行政は国交省所管だがエネルギーパイプラインの話は取り付く島がない。国を挙げて取り組む方針と、横串を刺した組織が必要だ。

 松尾 規制やルールを待たず民間企業がやれることをやる目線が重要だ。

 山崎 国交省とも連携して進める。エネルギー全体の視点が重要だ。太陽光での農地活用など農水省との問題も出ている。地域と一体の開発も後押ししたい。

 橘川 強調したいことは。

 小出 課題は金融だ。地域の小資本は金が付きづらい。少額融資などが動くと面白い。

 森澤 このようなフォーラムをメディアに報じてもらい、民意を高めるのも重要だ。日本は化石エネルギーに恵まれない国だ。それが今は化石エネルギーを持たない強みがある。再エネは様々な利点を日本にもたらす。

 松尾 自分達の消費形態を把握した電力購入が前提だ。

 山崎 再エネ比率24%を確実にし超えていくが上限ではない。主力電源の条件を満たすため、あらゆる施策を講じていけば超える。気付いたこと全て直す勢いでやる。

 橘川 再エネの主力電源化の政府方針を踏まえどうしたら良いか考えた。流れを変える時だと痛感した。

安定電源を目指す
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課長 山崎 琢矢 氏

 夏に閣議決定したエネルギー基本計画で再生可能エネルギーを主力電源にすることを明確化した。

 課題の一つは、欧州と比べて倍のコストが他の電源と競争できるまで下がること。もう一つは、長期安定電源化。再エネを、地域と共生する責任ある電源にしていくための仕組みづくりを進めたい。FIT制度の抜本見直しの終了を待たず、いかにFITから自立したモデルを可能な限り早期に、そして多く実現していくかが鍵だ。
顧客の変革を支援
SAPジャパン IoT & デジタルトランスフォーメーション ディレクター 松尾 康男 氏

 SAPはドイツに本社を置く企業向けソフトウエアを提供する会社だがユニークな立ち位置にある。RE100に参加した2015年の段階で既に自社のデータセンターや施設に使う電力で再生可能エネルギー100%を達成。
 さらに世界の30万社以上にソフトウエアを提供することで国内総生産(GDP)の76%に関わる立場を生かし、顧客企業の生産や物流といった業務の効率化によるエネルギー消費削減など自社の枠を超えた貢献をしている。

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