電力・ガス自由化時代における再生可能エネルギーの役割

地域活性化の起爆剤に

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■基調講演

電力システム改革の現状と今後の展望

経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 電力産業・市場室長 下村 貴裕 氏

 再生可能エネルギーを含む多様なエネルギー源を活用し、どのように電力システムの中に取り込んでいくべきか。電力の安定かつ低廉な供給を求める声は一段と高まっている。

再エネ大量導入へ具体策を

 今般の電力システム改革は、2011年の東日本大震災を契機に、従来の地域ごとに供給を行う仕組みを見直し、(1)安定供給の確保(2)料金の最大限抑制(3)需要選択肢・事業機会の拡大──の3つを目的として進めている。

 小売りの全面自由化によって様々な事業者が参入し、新電力のシェアが伸びている。料金メニューも多様化し、従来一般的だった基本料金と使った電力量で料金が増えていく従量料金の2部料金制に加えて、最低料金制や完全従量制、定額制といった選択肢が出てきている。

 18年度に閣議決定された第5次エネルギー計画では、新たに50年に向けたエネルギー転換・脱炭素化への挑戦といった内容が盛り込まれた。

 システム改革を進めるにあたっては、さらなる競争の活性化と安全性・安定供給の確保、環境適合などの公益的な課題への対応を両立していくことが不可欠だ。

 具体的な競争活性化策としては、石炭火力や大型水力、原子力などのベースロード市場の創設、地域をまたぐ送電線の利用ルールの見直し。中長期的に必要な供給力・調達力を確保する容量メカニズムの導入、非化石取引市場の創設も進めたい。

 再エネの大量導入時代に向け、既存系統を最大限活用する「日本版コネクト&マネージ」の具体化を早期に実現することが必要だ。

■パネルディスカッション

電力・ガス自由化時代における消費者にとっての付加価値


●パネリスト

下村 貴裕 氏

佐藤 育子 氏

小坂田 昌幸 氏

●コーディネーター

東京理科大学大学院 経営学研究科 教授 橘川 武郎 氏


全面自由化から2年半 新電力、着実に拡大

 橘川 電力自由化の現状をどう見るか。

 佐藤 東京電力は電力だけでなく、ガスも提供しており、全国4位のガス事業者でもある。いまは電力とガス、熱といったエネルギーを一括して販売できる。エネルギーだけでは差別化できない状況で、どれだけ付加価値を顧客に提供できるか、それがこれからの重要な課題になる。低炭素化社会という観点から考えると、やはり化石燃料を減らすことがポイント。再生可能エネルギーの需要に応えることが重要だ。

 小坂田 分散するリソースを束ねて制御するVPP(バーチャルパワープラント=仮想発電所)のサービス提供者という立場からすると、自由化は大きなビジネスチャンス。資源の効率的利用と環境調和の両立を支えていきたい。日本の場合、再エネの導入と自由化を含めた電力システム改革がほぼ完全に同時進行している。他国の事例にならうだけでは問題は解決しない。

 下村 2018年6月現在の新電力のシェアは14%、スイッチング(切り替え)は大手の自社内も合わせて18%となっている。全面自由化2年半で、着実に進展してきたといえる。しかし自由化の恩恵が隅々まで行き届いているかというと、まだ課題も多い。

評価高い電源に注力 価値創造が鍵

 橘川 自由化時代がもたらす消費者にとっての付加価値とは。

 佐藤 グローバルな視点で環境価値を見いだす企業が多くなっている。競争が進んでエネルギーが安くなるのはもちろんだが、新しいサービスの提供によって付加価値が高まる。水力電源は環境価値に加えて地域振興面でも価値評価が高い。当社では電力供給ブランドとして、栃木県や山梨県など、地元と一緒に行う水力電源メニューを多数開発している。

 小坂田 VPPを活用することで、老朽化した火力発電所など、普段稼働していないのにいざというときのためにメンテナンスをしている設備を減らしていける。蓄電池を組み合わせたサービスを提供するなど、需要家や様々なパートナーと一緒に考え、支援していきたい。

 下村 電気を手段として、その上にどのような価値の創造ができるのか。電気と組み合わせた新しいサービスが提供されるようになることで、消費者にとっての付加価値が広がっていくことを期待したい。

地域の課題解決 選択肢広がる

 橘川 再エネは分散電源としての一面もある。それを育てることが地域の活性化につながるのではないか。

 小坂田 地域との連携では、地域の安全性をいかに保つかとか、地域の価値を向上させるために何ができるかといった視点が入ってくる。単純な価格競争とは違う。横浜市の例では、防災拠点にBCP(事業継続計画)の電源をキープするという観点が出てきた。自由化と地域連携の中で、再エネの安定的な活用へ向け一つの道筋が見えてきた。今後さらに選択肢が広がることを期待している。

 佐藤 地域の総合インフラの発展の方向性はそれぞれの地域ごとに異なる。地域の様々な資源、電気やガスをはじめとするエネルギー供給網やそれ以外の交通や水道、あるいは廃棄物処理を含めた分野まで目を向け、その地域ならではの開発の仕方を探るべき。再エネと電気自動車との組み合わせ、蓄電池とのVPPといった新技術の活用によって新しいビジネスモデルが生まれ、地域の活性化につながるだろう。

 下村 以前は、家庭の消費者はエネルギーを選択することすらできなかった。全面自由化によって、地域のエネルギーも選択できるようになり、様々な地域連携が生まれてきたのは歓迎すべきことだ。

消費者ニーズ見据え さらなる規制緩和へ

 橘川 政府と民間の役割、規制緩和を含めて、これからの課題は何か。

 佐藤 消費者ニーズに添うサービスを日々提供している当社としては、今後もさらなる規制緩和を進めてほしいと思う。その際には、国民レベルでの議論やコンセンサスはとても大事になる。

 小坂田 東芝の中でも立ち位置によって、さらなるスピード感を期待するところと慎重に進めてほしい部分がある。もともと日本の電力は停電が非常に少なく、ガスの安全性も高く高品質。消費者の心理としては、廉価なエネルギーの選択肢を増やしていきたい。そのなかで再エネの大量導入とシステム改革をいくつか課題はありながらも何とか同時進行してきたのは、うまく官民連携ができていたから。

 下村 技術の革新が非常に速くなっている。その一方で、ネットワーク形成には10年単位の期間を要するため、両者の足並みをそろえることが非常に難しい。費用負担の課題も含め「次世代技術を活用した新たな電力プラットホームの在り方研究会」などで議論を深めていく。

 橘川 自由化の先に多様な選択肢が見えてきた。可能性を秘めた資源をどうやって社会インフラに活用していくのか。それこそが、エネルギー自由化が消費者にとっての付加価値を引き出すうえでのインパクトになるという印象を得た。

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