電力・ガス自由化時代における再生可能エネルギーの役割

IoTとAIでエネルギーネットワークに新価値

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 電力・ガスの小売り全面自由化で業界の垣根を越え競争が活発になっている。脱炭素社会へ再生可能エネルギーのさらなる活用も急務だ。情報通信技術(ICT)、すべてのモノがネットにつながる「IoT」、人工知能(AI)を駆使し、低環境負荷で強靱(きょうじん)な付加価値の高いエネルギー基盤をどう生み出すか。10月11日に開催された日経社会イノベーションフォーラムで交わされた、産学官キープレーヤーの議論を採録する。

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■来賓挨拶

創意工夫と政策を両輪に

経済産業省 資源エネルギー庁 長官 高橋 泰三 氏

 政府は7月にエネルギー基本計画を改定し、安定供給、経済効率性、環境への適合、安全性のバランスを取って進める「3E+S」の考え方をさらに高度化させる。エネルギー自由化を促進させる競争環境の整備を進め、再生可能エネルギーは2030年時点で主力電源にすべく、国民負担を抑制しながら最大限の導入を図ることを基本方針として進めていく。IoT、AIなどの新しい技術を駆使し、電力ネットワークはエネルギーの観点を超え、様々な業種・企業、個人やモノそれぞれが持つデータがつながることで、デマンドレスポンス、家電との融合など新しいサービス、ライフスタイルの提案にもつながっていく。産業界の創意工夫、政策対応を車の両輪としてしっかり連携させ、新しい産業の姿を共に実現させていきたい。

■基調講演

エネルギー自由化と地産地消ビジネスモデル

東京工業大学 特命教授・名誉教授 柏木 孝夫 氏

 エネルギー自由化とパリ協定順守は実は相反する。いかに脱炭素型のシステムでビジネスとしてキャッシュフローが出る形にするか。原子力で一定の安定電源を確保し、再生可能エネルギーを固定価格買い取り制度(FIT)から早期に経済的に自立させ主力電源にすることが現実的な解と考えられる。国が目標とする2030年の電源構成における再エネの割合24%は十分達成可能だ。

IoTで再エネ自立化を

 再エネの主力電源化には気象に左右される変動成分の制御が不可欠。電圧と周波数を一定規模に保たないと停電につながるからだ。余剰発電分を蓄電池に、もしくは水素に換えて蓄える、揚水発電と組み合わせるなど割高になるコストも勘案し経済自立化を図らなければならない。

 その解の一つがエネルギーを地産地消するビジネスモデル。街区の中で風力、メガソーラーや蓄電、水素変換を組み合わせ、熱電併給システムも整備して熱導管や自営線でつなぎ、エネルギー需要をデジタル技術できめ細かく制御する。IoTでつながる機器を制御して、余剰が発生するときは氷など必要なものをつくる指示を出して需要を上げるなど、発電と消費の同時同量を目指す。

 こうした取り組みを進めることで、30年度にはエネルギー需要の3割程度は地産地消型エネルギービジネスモデルで賄うことができ、需要の動向が大規模電源に影響を及ぼさないグランドデザインが完成する。ネットワークにつながる機器からもたらされるビッグデータを活用した付加価値ビジネスも多彩に考えられ、日本の経済発展にも大きく貢献するだろう。

■基調講演

東京電力グループの環境に関する取り組み

東京電力エナジーパートナー 常務取締役 E&G事業本部長 佐藤 育子 氏

 東京電力は再生可能エネルギーを今後の主力電源と位置づけており、国内外約700万キロワット規模で開発を進め、1千億円程度の利益水準を目指す。太陽光発電、水力、風力による発電サイトがあり、揚水水力を太陽光と組み合わせて発電量の調節に使い系統安定に取り組んでいる。洋上風力に関しては、国内で数百万キロワット規模を開発。事例としては、千葉県で「銚子沖ウィンドファーム」という実証試験を2013年から行っている。アジア、欧州へ進出するために、バリューチェーンの確立、コスト・技術・人材において競争力を向上させていきたい。

再エネ主力電源化へ実証

 現在、従来電力と再エネとの連携が様々なところで始まっているが、系統の脆弱性にどう対応していくかが課題。従来、配電線は配電、送電線は送電を制御していたが、送配電の取り組みとしてより多くの系統連系ができる技術開発を進めている。これについて新島で実証実験を行っており、風力や太陽光電源で自立的な系統運用するため需要を想定し、系統運用技術を導入している。

 当社グループとしては、技術力を生かして今後も事業開発を目指す。発電分野では再エネの主力電源化、火力発電の効率化だ。送配電事業ではエネルギーの連携拡大に向けた技術開発と広域送電ネットワークの総合的な運用。小売り分野では二酸化炭素(CO2)フリーの料金メニューの拡大、あるいはエネルギーコストを低減しながら、環境負荷を最小限にするトータルエネルギーソリューションの提供。こういった取り組みで低炭素社会へ貢献していきたい。

■基調講演

電力・ガス自由化時代における関西電力の取り組み

関西電力 常務執行役員 営業本部長代理 川崎 幸男 氏

 多彩な料金プランを提供する中、価格競争だけでは顧客からの評価に限界がある。付加価値サービスで差別化していく必要があるだろう。

 関西電力には電気・ガス使用量・料金のほか生活に役立つ情報を届けるウェブ上のコミュニケーション基盤があり、それをベースに生活トラブルの駆けつけサービスを展開。さらにスマートスピーカーとスマートリモコンを組み合わせ、専用アプリを導入すると、家電の操作が屋外からもできる。生活の利便性を提供するだけでなく、スマートメーターとAIにより電気使用量を分析して生活リズムの異変を検出して知らせる見守りサービスも開始した。

付加価値で差別化目指す

 法人向けではエネルギーマネジメントサービスを行っており、省エネによるコスト削減のニーズに応えている。関西エリア限定で環境意識の高い企業に一般水力のCO2フリーの環境価値を活用した料金メニューも提案している。

 再生可能エネルギーに関する取り組みでは、2030年に50万キロワットの導入に向け、全国でバイオマス、風力、太陽光発電所の新設検討や調査に参画している。実例としては、電力会社で日本初の営業運転をした1万キロワットのメガソーラーである堺太陽光発電所や、1万2000キロワットの淡路風力発電所がある。海外における取り組みでは、ラオスのナムニアップでダムと発電所を建設しているほか、アイルランドでも風力開発に参画している。

 再エネを電源ポートフォリオの中に適切に組み込み、新しい価値を創造して顧客に提供していくことが非常に重要だと考えている。

■基調講演

電力自由化市場の環境変化とエネットの取り組み

エネット 取締役 営業本部長 兼 低圧事業部長 長谷口 直行 氏

 新電力は、発電設備を持つ企業や卸電力取引所から調達した電気を、電力会社の送配電ネットワークを介して、契約した顧客に届ける。

 エネットは新電力として2000年に設立、自社の発電所も備え、全国規模で電源を最適運用しながら、北海道から沖縄の法人向けに価格競争力があり、CO2排出係数が低く付加価値あるサービスを提供している。

グリーン電力多彩に提供

 16年のパリ協定発効以来、環境、社会、ガバナンスに優れた会社にのみ投資するESG投資の動きが目立つ。日本でも科学的根拠に基づきCO2削減を行うSBTイニシアチブへの加盟や、使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業も増えている。我々新電力に対しても再エネ利用を証明できるサービスを求める声が非常に高まっている。

 こうしたニーズを踏まえ、当社は国のFITによらない再エネのほか、グリーン電力証書、J─クレジット、非化石証書など、様々な観点からグリーン電源を調達することで、国際イニシアチブ「RE100」加盟企業などに向け、国際ルールにも対応するCO2排出ゼロ電力のほか、低CO2排出量の電力や地産地消向け電力など様々なメニューを提供している。

 また昨年夏にはAIを活用した省エネサービスを開発。ビル単位で自動で省エネ診断する他、1社で数百以上のビルを持つ顧客には、ロボットで自動化を図り、即時に報告書を作成できるようにするなどトータルでのコスト削減を提供する。

 今後もICTを活用しエネルギーに新たな価値をつけることで持続可能な社会に貢献していく。

■基調講演

再生可能エネルギーの活用と電力安定需給に貢献する東芝の技術

東芝エネルギーシステムズ 技師長 小坂田 昌幸 氏

 政府が打ち出す2030年の電源構成は、再生可能エネルギーが22~24%を占める。なかでも太陽光と風力の市場規模は世界的に今後も大きく拡大することが見込まれ、特に国内の風力市場は洋上・陸上ともに大きくなると予測されている。

 「電気の安定供給の確保」「電気料金の抑制」「選択肢や事業機会の拡大」を目的とする電力システム改革は、現在ほぼ最終段階まで進んでおり、日本は、再エネの大量導入と電力システム改革の同時進行という非常に難しい挑戦を行っている。

 東芝はこの挑戦を、ICTを使ったデジタルトランスフォーメーションで支えていきたいと考えている。

ICT駆使し改革を支援

 当社グループが取り組む再エネ事業は、太陽光、水力、風力、地熱、さらに水素まで多岐にわたる。再エネは自然環境に左右され出力変動が激しく、不確実性が高い。省エネを束ねるネガワット、蓄電池など需要側の分散エネルギーリソースをバーチャルパワープラント(仮想発電所:VPP)として束ねて調整力を提供し、使いやすい形で電気の安定供給を実現する「エネルギーリソースアグリゲーション」に取り組んでいる。

 今後は、全体の需給バランスとローカルでの健全性を確保するための系統制御技術、再エネの不確実性や需要の予測技術、洋上風力などでの遠隔地からの送電技術、さらには電力系統の安定を保ちつつ、再エネを大量に導入するための「日本版コネクト&マネージ」を実現するための系統安定化システムなど、再エネを主力電源としていくための電力システム技術面でも貢献していく。

■基調講演

電力・ガス自由化時代における東京ガスグループの取り組み

~再生可能エネルギーを活用した低炭素社会の実現に向けて~

東京ガス 副社長執行役員 エネルギーソリューション本部長、電力本部長 穴水 孝 氏

 ガス・電力の小売り全面自由化時代を迎え、東京ガスグループは、クリーンな天然ガスのさらなる高度利用、再生可能エネルギー電源開発をはじめ顧客サービス、付加価値の向上を目指し、現在様々な変革に取り組んでいる。

 昨今進めているスマートエネルギーネットワーク(スマエネ)の構築は、都市ガスを利用した熱電併給システム「ガスコージェネレーション」と再エネを組み合わせることでさらなる低炭素化が可能となる。また災害時にはエネルギー供給継続を可能とし、都市や地域のレジリエンス向上にも貢献する。

スマエネ×再エネで低炭素化と強靭化

 豊洲埠頭や栃木県清原工業団地ほか、多くの地域でスマエネの展開を進めており、田町駅東口では港区と連携し、太陽光・太陽熱といった再エネ・未利用エネの導入、停電時の電力・熱の継続供給、ICTを活用したエリア全体のエネルギー最適制御などにより「低炭素で災害に強いまちづくり」を実現している。

 再エネ電源の開発では、太陽光・洋上風力発電などへの取り組み強化、ビジネスパートナーと連携した事業参画などを加速する。まずは国内外で100万キロワット規模の電源獲得を目指したい。

 将来に向けては、再エネを用いて製造したクリーンな水素と、発電所などの需要地において排出されたCO2から、都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術(メタネーション)の活用が考えられる。既存の都市ガス導管・設備を活用することも可能で、これによりCO2フリーとみなしうる都市ガス供給による、低炭素化モデルの構築を目指している。

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