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香港グルメ、「イノベーション」の40年

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ヌーベルシノワをいち早く取り入れた日本

 世界を巡ったヌーベルシノワの手法を、いち早く取り入れようとしたのが日本の中国料理界だった。その中のひとりが「赤坂璃宮(りきゅう)」の譚彦彬(たん・ひこあき)会長だ。戦後の高度成長以降、都心に新設する大型ホテルの中には、一流の厨房師を香港などから年収1000万円の収入を保証して招くケースも少なくなかったという。東京にも新しい中国料理を担う人材が蓄積されていたのだ。

 横浜・中華街出身の譚会長も、京王プラザの副料理長からホテルエドモント(現・ホテル・メトロポリタンエドモント)の料理長にヘッドハンティングされていた。馴染みの音楽関係者からヌーベルシノワの斬新さを聞かされた譚氏は、直ちに自費で香港に飛んだという。「周中シェフの厨房に入れてもらい、素材のさばきから方から盛りつけの方法、配膳の演出までを見て研究させてもらった」と譚氏。

 東京に戻った譚氏は周中シェフの手法に加え、仏料理の中村勝宏シェフの意見も取り入れていった。96年に開設した「赤坂璃宮」は、ヌーベルシノワのひとつの到達点だっただろう。譚氏は「香港の一流レストランの洗練さを伝えながら、新鮮な日本の食材で調理するのが基本」と語る。缶詰やケチャップは使わない。

洗練された雰囲気、厳選された食材をワインで

 オープンからの名物料理が「赤ハタの姿蒸し」だ。代表的な香港の海鮮料理だが、五島列島や鹿児島の漁場で獲れたハタにこだわる。1匹ずつ蒸し時間を微妙に調整し、ジューシーな食感になるよう皮下脂肪がうすく透ける程度に蒸しあげて、仏ブルゴーニュの繊細なワインと合わせて提供する。ワインはヌーベルシノワにとって欠かせない存在だ。

 

 香港料理のもうひとつの代表はチャーシューや焼鴨などの「焼き物」だ。てっきり赤ワインと合わせるかと思いきや、赤坂璃宮では白ワインとともに出す。オープン当初に比べると味付けはより軽くなってきている。「塩などは5%くらい少ない」と譚氏。現在75歳だが「新しい食材の追求は今後も生き残りのために欠かせない。アジア系の料理が伸びてきているからだ」と語る。

 香港グルメの味は、現在の日本人に広く受け入れられているようだ。香港点心専門店の「添好運」は、オープン半年後の現在も行列客で混み合っている。1時間半から2時間待たなければならない。日本向けにアレンジしない現地と同じ味付けで「世界一安いミシュラン一つ星レストラン」がキャッチフレーズだ。もっとも日本店の場合は人件費の関係もあり、昼食の1人当たり客単価は2600円前後と香港店の1.5~2倍。それでも行列が途切れることはない。運営するWDIグループの羽白稔・クリエイティブダイニング部長は「1年に1店舗程度のペースで広げていきたい」としている。

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