官民連携と地域連携で実現する地方創生

地方創生と人材育成 ~地域を活かし、地域で活きる人材の育成~

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【基調講演】子育て、教育によるまちづくり ~北海道河東郡上士幌町の取り組み~

上士幌町長 竹中 貢 氏

 北海道の上士幌町は酪農畜産が盛んな町だが、半世紀以上にわたり人口が減り続け、2014年には4800人台にまで減少した。移住者や企業を呼び込むため、子育て政策に重点をおき、今春には5000人台にまで人口が回復。全転入者の8割以上が20~40代の若い世代だ。また三重県の製菓工場、官民連携による新会社や求人ニーズ旺盛な農業法人などにより、雇用が拡大している。

徹底した教育支援で若者増

 若者の地方移住の際の課題は雇用・子育て・教育であるため、徹底した子育て・教育の支援を行った。幼稚園と保育所を一緒にした認定こども園の10年間完全無料化、高校卒業までの医療費無料化、マイホーム建築費子供1人につき100万円補助などだ。教育の質にも注目し、こども園での外国人による語学教育、小中高一貫教育の体系化にも取り組んでいる。また、「ふるさと納税・子育て少子化対策夢基金」を創設して寄付金を活用。本年度からは「ふるさと納税・生涯活躍いきがい基金」も創設した。官民協働の「株式会社生涯活躍のまち かみしほろ」では地域包括ケア、生涯現役人材センター等、健康寿命の延伸を目指し課題に取り組んでいる。

 今年7月にスタートした「かみしほろ塾」では地方創生の専門家を招いた講座を開催。他にも官民連携の観光地域商社を今年度設立した。こうした中、移住定住事業等で官民連携を主導してきた「NPO法人上士幌コンシェルジュ」が、ふるさとづくり大賞総務大臣賞を受賞した。

 国全体の課題である人口減少、大都市圏一極集中の是正のためには、地方創生が不可欠であり本気で取り組むことが大事だ。


【対談】地域の課題解決ができる人材の育成


上士幌町長 竹中 貢 氏
青山学院大学 教育人間科学部 教授/新学部開設準備室 室長 鈴木 眞理 氏

社会教育の実現には住民の理解が不可欠

鈴木 自治体の施策には首長のリーダーシップ、アイデアの創出が重要だ。なぜ様々な施策を実現できるのか。

竹中 幼少期から「地方がもっと豊かになってもいいはず」という思いがあった。職場で社会教育、生涯学習に携わったことも大きい。社会教育にはマニュアルがない。地域の良さを生かした施策に取り組んだ結果、挑戦することが当たり前になった。例えば上士幌町の廃線跡の橋が有名になったが、いわゆる産業遺構が観光資源になったりする。社会教育には地域住民の理解が不可欠。NPOなど住民が中心になり行政はサポートする。こういう関係ができると物事が動く。

鈴木 地域を作るのは人間で、人間を作るのは学びだ。専門職員、リーダー、住民が一緒になって動くことが必要だが、リーダーとなる人材育成について聞きたい。

竹中 職員が信念を持って動かなければ住民はついてこない。強い思いで進めば理解を得られるし、リーダーも自然に生まれてくる。リーダーは覚悟を持って臨むことが大事だ。

鈴木 具体的な施策が生まれた経緯や苦労した点は。

竹中 あれこれ手を付けるのではなく象徴的なことをやれば、他にも波及する。将来的な潮流を見据えて集中することが大事。住民の理解を得るのは大変だが、外から来た人の考え方が入ることで新しい課題が見えることもある。

鈴木 職員に対してはどう思うか。

竹中 職員には成功事例をまねるのではなく、苦労したことから得るノウハウを学んでほしい。挑戦して失敗したなら、必ずそれ以上の見返りはある。今は職員が率先して動いてくれる。地域おこし協力隊や民間の力など、多様な人材の確保も大事。ネットワークを全国に張り、情報収集もしている。人のつながりは最も大切なことだ。

地域貢献担う学生を育成する新学部開設

鈴木 青山学院大学では以前よりボランティアセンターで学生による被災地支援等に取り組んできた。来年4月から相模原キャンパスに地域貢献を中心に据えたコミュニティ人間科学部を開設し、地域のNPO、自治体等と協力して学生を育てていく。

竹中 価値のある地域づくりのためにも学生のアイデアや視点は大事だ。大学と地域、両方にとって本当に実益のある形が望ましい。

鈴木 新学部では、見過ごされやすい地域の様々な課題について考えられる人間を育成したい。学生には自分たちも地域の一員になるつもりで課題に迫り、解決の方策を考えてほしい。

竹中 学生が地域で一定期間生活するための場所の提供は地方の課題だろう。今、やりたいのは高速通信のインフラ整備だ。大学のサテライトオフィスを作ったり、学生たちを随時受け入れたり、様々な可能性がある。

鈴木 一方で大学も地域もサービスの提供をし過ぎると弊害もある。

竹中 サービスをし過ぎるとそれが当たり前になってしまう。認定こども園無料化は10年間の期限付きだ。その間に何をするか。無料にしなくても来てもらえる環境の構築も課題だ。町の持続のために考えることが大事だ。

鈴木 将来や後のことを考えることは難しくもある。

竹中 今よりも将来に対する責任を考えたい。将来どう評価されるかだ。

鈴木 新学部も日本の将来に絶対に必要だ、という強い思いで取り組んでいる。30年前、生涯学習のまちづくりを始めた当時の思いとは。

竹中 学ぶことが経済や収入の増加にどうつながるかを住民に伝え、実現することは大きな挑戦だった。大学の地方創生の取り組みも必ず評価されるはずだ。

鈴木 大学と地域の連携のあり方にも課題がある。「株式会社生涯活躍のまち かみしほろ」のように町主導で作ってくれると、教員は関わりやすい。組織等がつなぎ役となって大学、教員と自治体が協力し、そこに学生も参加するのが望ましい。

竹中 まちづくりの会社は公益性のある株式会社なので、学生たちと連携し、新たなまちづくりを一緒に考えることもできる。

鈴木 地域と共に、青山学院のスクール・モットー「地の塩、世の光」を体現するような学部を作っていきたい。

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