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戦略・戦術なき営業、どうすれば立て直せる?

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自分の「思い」をベースに戦略・戦術を展開する

 では、こうした今の時代に、営業はどうあるべきでしょうか?それには「そもそも営業とは何か?」ということに立ち返る必要があります。

 まず、長らく続いた分業体制の影響によって、「営業は、セル(売買行為)」だと思っている人が多いようですがそれは違います。確かに分業体制の時代においては、それで正しかったのでしょうが、営業はそもそも顧客にとって価値のあるものを創造する「顧客価値創造」です。また、その価値を顧客に伝えるのが「マーケティング活動」であり、最後にそれらの活動の結果として「売買行為」が発生します。つまり、「顧客価値創造」「マーケティング活動」「売買行為」の三つが営業なのですが、売買行為だけをピックアップして営業だと考えている企業や人がかなり多いようです。

 しかし、本来の意味を考えると、営業部門が営業を担当するだけでは不十分で、マーケティング部門も製造部門も営業に関わり、全社一丸となって戦うべきです。またドラッカーの「マーケティング活動はセルを不要にすること」という名言がありますが、アメリカと比べると日本は国土が狭いところが大きく違います。そのため、日本では営業においても白兵戦が重要です。

 そういうことを踏まえて、私が提唱しているのが、北澤モデルです。図では、自分の「思い」とありますが、「自分たちはこうあるべきだ」「こういうようなことがしたい」「こういう会社にしたい」「こうあるべきだ」――、これがすべての出発点になります。この「思い」がない、あるいは、「思いはあるのだけれどしっかり考えたことがない」という企業や人が多すぎます。これは、日本が高度経済成長のときに「思い」についてあまり考えずにやってきたためです。

 ところが、本当はこの「思い」がないと、良い戦略、共感できる戦略になるわけがありません。営業で最も重要なのは「顧客創造」だとさきほどお話ししましたが、顧客から見て他社と差別化できるものを作るというだけでは不十分です。もっと大きいのは、「われわれはこういう会社なんです」「こういう思いで事業をやっています」ということを伝えて、「なるほど、そういう会社なら付き合おう」「君みたいな営業と付き合いたい」というように共感を得ることです。この「共通の認知」を作ることが営業では最も大きな仕事であり、それを前提に、「思い」を支える「仕組み」と「活動」を考えるのが正しいやり方です。

 では、その「思い」を実現するための営業プロセスをどのように組み立てるべきでしょうか。そもそも営業プロセスは「情報収集」「アプローチ」「関係構築」といったより細分化されたプロセスで構成されます。

 そして自分たちの会社の「思い」がたとえば「お客様との関係をしっかり構築していく会社や部署にしていきたい」というものだとしますと、「関係構築」というプロセスをさらに細かなプロセスに分解して、それらがきちんと実行できているのか確認しようという流れになります。

 一方、自分たちの会社の「思い」を実現するために「アフターフォロー」が大事であると考える場合は「アフターフォロー」をより細かなプロセスに分解して、それらを重点的に強化するというやり方になります。そして、その強化に付随して必要になる知識を全員で付けていこうということになるでしょう。それら一連のことが実現できて初めて、「自社の戦略ができた」と言えます。

 併せて、行うべきなのが、営業プロセスの裏側にある購買プロセス(カスタマージャーニー)を知るための活動です。たとえば、営業の情報収集を行う裏側にはお客様が「認知・興味」を持つという活動があります。その「認知・興味」に重点を置く会社になりたいのだということであれば、「認知・興味」をさらに分解して強化していくべきです。これらを忘れて、対前年比何%増といった目標を立てるだけでは営業はほとんど機能しなくなります。

 また、今や多くの会社には、SFA(営業支援システム)があると思いますが、訪問頻度などを管理するだけに使っているのではもったいなさすぎます。私は課長時代に「人間SFA」というものをやっていました。日報を省く代わりに、「情報収集」や「アプローチ」といった営業プロセスのどれを、どこでやっていたのかを業績とともに集計して、重点的に強化すべき営業プロセスを洗い出していました。

 こうしたことを通じて、営業の管理職は、「ボス」ではなく、「営業リーダー」になるべきです。ここでいう「営業リーダー」とは時代の変化の流れをしっかりつかみ、「思い」をもとに、こういう会社にしたいのなら、どのような営業プロセスを展開するのかまでを理解して、戦略や戦術に落とし込めるような人を指します。この「営業リーダー」を育てないと、モノがなかなか売れるようになりません。あくまでもセルではなくて、顧客創造が営業の中心であることがポイントです。


キーワード:経営・企画、営業、経営層、管理職、プレーヤー、働き方改革、マーケティング、人事、人材、研修

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