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戦略・戦術なき営業、どうすれば立て直せる?

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 なぜ、このような傾向になったのでしょうか。これは「失われた15年」という言い方もしますが、まずは「成果主義」「MBO(目標管理)」の導入が原因です。これらが導入された2000年ごろ、多くの会社はリストラをどうしてもしなければいけなかった。そこで成果主義などによって、がんばった人はしかるべきポストにつけるが、そうでない人には違う道へ進んでもらう制度を採用しました。ほとんどの企業は導入していると思います。

 MBOでは現場担当者がそれぞれリーダーとコミュニケーションをとり、目標を立てて、その達成に向けて努力するわけですが、落とし穴がありました。たとえば部下が5人いて、誰かに「A」を付けると誰かに「D」を付けなければなりません。導入当初は「日本は和をもって貴しとなす」という言葉が生きていましたが、制度導入から15年以上たちますと、和の心は薄れ、隣同士では仕事の核心めいた話をあまりしなくなります。相手を助けてしまうと自分の評価が下がる恐れがあるため、やむを得ないところがあります。

 まだ、現場のほうはそうはいっても日常的にお客さんと商談などで戦っていますので、ある程度の横のコミュニケーションはあるかもしれません。とはいえ、営業リーダーである課長同士あるいは部長同士で業務ノウハウを交換するといったことはほとんどできないという厳しい状態です。成果主義という構造的な仕組みを採用したがために、「実」はとったかもしれませんが、「コミュニケーション」という面では後退したのです。

 もう一つの原因としては、効率重視の営業スタイルが挙げられます。高度経済成長の時代は分業体制で、「製造」と「販売」のように徹底的に組織を細分化して効率を上げていました。ところがモノが売れない時代になると、そのままでは対応が難しくなり、お客様に社員全員で向き合う体制が必要になります。さらに、働き方改革で残業を減らすことが求められましたが、お客様と話し合う時間が削れないため、社内のチームで話し合う時間が削られました。

 組織のピラミッド構造が変化したことも原因として大きいでしょう。従来のピラミッド型組織では中間管理職が新人の面倒をみていました。それが効率化重視の流れのなか、できるだけ組織をフラットにする文鎮型組織に変わった結果、プレイヤーばかりになって、若い人の面倒を見る時間がなくなりました。そうすると新人から入社5年目ぐらいまで社員の成長が遅くなるという現象が生まれます。

 それらに加えて、日本のもともとのビジネスモデル、キャリア形成モデルに弱いところがありました。これらは高度経済成長のときに作られたもので、第一線の仕事(営業の仕事)を単純化・画一化して大量に売るとともに、いわゆる「ガンバリズム」で対応するという特徴がありました。日本人は目標が決まったらそこへまい進しますので大きな成果も得られました。

 ところが、最近のように市場の状況が複雑になって、なかなか商品やサービスが売れない時代になると、ピラミッド型の組織は機能しなくなります。本来は、営業リーダーのような中枢を担っている人たちが市場の変化に立ち向かっていかないといけないのですが、単純化・画一化してガンバリズムでやってきたばかりに「ボス化」してしまうのです。ボス化とは、内部調整や部下の評価、おみこしにいかに乗るかといったことばかりに注力するようになることで、これでは変革は起こせません。

 つまり、市場が縮小し、顧客接点に全員が集中することが求められますので、たとえると、江戸時代の商人のように知恵と才覚でモノを売っていたころに立ち返らないといけないと思いますが、そうなっていないのです。

 顧客や部下のほうも変化しています。

 まず、インターネットの普及によって、取引行為の主導権が提供企業から顧客へシフトしています。そもそも営業に価値があったのは情報をもっていたからです。ところが、今やインターネットによって、顧客のほうが情報を持っています。料金や価格が高いかどうか、ほかに類似の商品やサービスがあるかどうかなどがすぐわかります。

 部下の指導方法も大きく変わりました。人口構造の変化に伴って、どの会社も採用難に見舞われています。部下の指導も上意下達から、「あなたの考えに共感したので、私も一緒にやります」といった、共感による自律の促進を中心としたものへと変わりつつあります。

 つまり、以前は企業や上司の論理でビジネスを行っていたのですが、今や顧客や部下の側の論理でビジネスが動くようになっています。つまり、大変革が起きています。

 もう一つ、ITに対する考え方が変わったことも大きいと思います。もともとのITは「CIT(コーポレート・インフォメーション・テクノロジー)」と呼ばれ、企業の基幹業務を対象に内向きのIT戦略を実現するものでした。それが今や「BIT(ビジネス・インフォメーション・テクノロジー)」と呼ばれるようになり、外向きのビジネスシーンに合わせたIT戦略を考えて構築しない限り、他社に勝てないようになっています。今はまだ、ブランド力や信用力があるから勝っている企業も、BITを構築しないといずれ負けていくでしょう。しかしCITでさえ、社内に人材がいないのに、BITへ移行しようと思っても容易ではありません。

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