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アジア史が示す「欧米中心」の落とし穴

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国際社会の秩序が揺れている。相次ぐポピュリズムの台頭や米中貿易戦争、欧州連合(EU)の動揺、混迷深まる中東情勢――。世界レベルでの「共通水準」を追求してきた米国も、トランプ大統領は逆に「反グローバリズム」を国連総会で表明した。地球規模で起きている対立・分裂の流れをどうみるべきなのか。「世界史序説 アジア史から一望する」(ちくま新書)を著した岡本隆司・京都府立大教授は、欧米中心に偏った歴史観が陥りやすい落とし穴に警鐘を鳴らす。

ギリシャ・ローマ文明は西方の外縁部分

 ――著書は古代オリエント文明の始まりから説き起こしています。「オリエント」の語源はラテン語で「日が昇る方角」。一般的には西アジア・エジプト地域を指しますね。

 欧米中心の歴史感覚では、アジアの本質が見えにくくなります。ギリシャ・ローマ文明も古代オリエント文明の中心エリアから見れば、西方の外縁部分が拡大したにすぎません。ヨーロッパはオリエント文明が波及・拡大していった西端、日本は東端で、ともに辺境です。

 歴史上の文明は農耕、遊牧、商業が交差する地域で発展しました。西アジアのオリエント地域と中国などの東アジア地域には、構造に共通の基盤があったのです。分立・争覇から統一に向かったアケメネス朝ペルシャやローマ帝国、秦・漢の成立過程は非常に似通っています。全世界を覆った3世紀の寒冷化と、その後のいわゆる民族大移動で、東西の帝国が滅亡した点も同じです。

 ――気候変動が起こした動乱は、社会を結束させるために、民族や地域を越えたグローバルな普遍性を持つ「世界宗教」を普及させました。代表は欧米文化の根幹であるキリスト教です。

 キリスト教は本来、シリア・ユダヤ地方というオリエント地域の中心部で生まれた西アジアの宗教です。東アジアでは大乗仏教が南アジアに始まり、中国、朝鮮半島、日本列島にも及びました。出家者個人の解脱ではなく衆生の救済を説く点に特徴があります。普遍性を持つ、最も新しい世界宗教がイスラム教です。

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