愛されシニアを目指すスキルアップ道場

シニアの気になる言葉遣い。なぜ、話し方が偉そうなのか? トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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 文章で話す――、それも丁寧語であれば印象は大きく変わる。先日、50代の知人と仕事の打ち合わせでカフェに入ったとき、彼はオーダーを聴きに来た二十歳くらいの店員さんとこんな風に会話していた。

 「ケーキセットに、抹茶オレは含まれますか?」

 ――「いえ、飲み物で選べるのは、コーヒーと紅茶だけなんです」

 「ああ、そうですか。抹茶オレは別料金ですね?」

 ――「はい、そうです」

 「じゃあ、ボクはケーキを単品で。それから抹茶オレをください。抹茶オレ、砂糖抜きでお願いします」

 ――「かしこまりました」

 思えば、彼はいつもとても人当たりがよく、職場では若い人からの人望も厚いと聴いている。そうか、誰に対しても丁寧な話し方をするからなのだ、と改めて気づいた。

若い人や立場が弱い人と偉そうに話すのは今や逆効果

 よくよく観察していると、どうもシニアには2種類いて、相手を見て「単語」で話す人と、誰に対してもきちんと「文章」で話す人がいる。若い人や立場が弱い人と偉そうに話すシニアと、誰とでも丁寧に接するシニアがいると言い換えてもよい。

 若い人や立場が弱い人に尊大な態度で話すシニアは、自分が上だと思っているのかも知れないが、今やそれは今や逆効果である。

 これまた私が30代の頃の話だ。ある上司が社会勉強と称して私をある企業の役員との会食へ連れていってくれたのだが、先方の役員(男性)が、自分よりはるかに若い私に敬語で話してくださったのに感動した。こんな年下の人間(私のこと)でも個人として尊重してもらえたと思ったし、うれしかった。その時の会食の様子を今でも鮮明に覚えてもいるほどだ。

 「愛されシニア」になるためには、やはり「丁寧さ」は大事だ。若手、年下の人に与える印象が全く違う。

 そもそも年齢が上だというだけで、相手を委縮させる何かを持ってしまうのがシニアだ。加えて、視力が衰えて眉間(みけん)に皺(しわ)を寄せて書類を見たりすると、当人としてはただ見えづらいだけなのに、はたから「怖い顔をしている」と思われることだってありうる。ただでさえ、たたずまいが威圧的になりがちなシニアなのだから、せめてコミュニケーションでは相手を尊重し、丁寧な言葉を発したいものだ。

 では、どうすればよいか。それほど難しいことではない。

●「おはよう」ではなく「おはようございます」といったように、誰に対しても「ございます」をつける。「お疲れ」ではなく、「お疲れさまです・でした」といったように「です・でした」を付ける。どちらも、たった5文字である。

●相手が誰であっても「さん付け」する。呼び捨てにしない。

●仕事の打ち合わせや依頼・相談などでは、できるだけ丁寧な言葉で話すようにする。

 無関心そうに振る舞っていても、若い人たちは、シニアのことをよく見ている。心の中で「偉そうで嫌だよね」と思っている場合もある。

 愛されシニアになる鉄則は、「誰に対しても丁寧に」だ。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ
 シニアの言葉遣いがあまりに丁寧さに欠け、若い人たちがビビッていたり、不快に思っていたりすることもあるだろう。若い部下たちから「あの人、なんとかしてくださいよ、感じ悪い!」と陳情されて、上司として何か言わなければと思いながらも、年上部下に物申すのは、きっとハードルが高いことに違いない。

 そんな時に便利なのが、以前もお伝えした「アイ・ステートメント(I Statement)」という話法である。今回は、アイ・ステートメントと肯定文を組み合わせる話法について説明しよう。

 たとえば「●●さん(シニアの名前)って、言葉遣いが乱暴ですよね」(「あなた主語」の表現)とか、「●●さん、丁寧に話さないですよね」(「否定文」の表現)という言い方ではどうしても相手を非難する雰囲気が出てしまう。それに対してアイ・ステートメントと肯定文を組み合わせた場合は「●●さん、丁寧に話してもらえると嬉しいのだけれど」といった言い方をする(「自分主語」かつ「肯定」の表現)。これで表現を一層柔らかくするのだ。

 さらに、シニアの長所をいったん褒(ほ)めてみるのもよい。

 「●●さん、ベテランで折角多くの経験を積んでいるのだから、それを丁寧に後輩に説明してくれると私も助かるんですけど」といった表現もいいだろう。

 シニアには、気難しい人、頑固な人がいるだろうし、プライドも高いだろうから、色々気遣わなければならなくて、メンドクサイと思うことはあるだろう。

 でも、コミュニケーションは「スキル」であり、応用範囲も広い。「ちょっと褒めてから、自分主語の肯定文でやんわり指摘する」。これを「スキル」として身につければ、シニア以外の幅広い人とのコミュニケーションもより円滑になるはずだ。
田中淳子(たなかじゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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