泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

トヨタのMaaS戦略、世界での現在地はどこか テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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トヨタがとらえるMaaSとは

 トヨタは約2年前の2016年10月にモビリティーサービスプラットフォーム(MSPF)の構築を推進すると発表している[1]。既に2年前に、移動を「サービス」として認識、その基盤となる「プラットフォーム」をこれからの事業として認識していたことになる。

 また、2018年1月には米ラスベガスで開催された世界最大級の国際見本市「CES」でモビリティーサービス専用EV(電気自動車)である、「e-Palette Concept」を発表した[2]。パートナーとして米アマゾン・ドット・コム、米ピザハットといったサービス企業、中国・滴滴出行(Didi Chuxing)、米ウーバーテクノロジーズといった大手ライドシェア(相乗り)事業者を迎え入れる。

 では、トヨタはこれら異業種の大手企業とともに何をしようとしているのであろうか。e-Paletteの内容をさらに細かく見ると以下に重点があることがわかる。

* 車両デザイン(低床・箱型デザインによる広大な室内空間)

* 情報公開および外部連携設計(車両制御インターフェースの開示)

* 車両運行サポート(ビジネスを支えるMSPF)

 このようにトヨタは、顧客となりうるモビリティーサービス事業者に対して、自動車による移動を行うシーンで求められる技術を幅広くサポートすることで、収益を上げようとしている。これによってトヨタは、モノづくりで収益を上げるのではなく、サービスで収益を上げる事業構造へシフトして行こうとしている。

 こういうと「自動車メーカーが果たしてサービス事業で収益を上げることができるのか」という人もいるだろう。

 しかし、MaaSがトヨタの数ある新規事業の1つに過ぎず、「うまくいけばいいなぁ」という程度の事業かというと決してそうではない。2018年5月の決算説明会の中で豊田章男社長は以下のようにコメントしている。

 ――私は、トヨタを「自動車をつくる会社」から、「モビリティ・カンパニー」にモデルチェンジすることを決断いたしました。「モビリティ・カンパニー」とは、世界中の人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する会社です[3]。――

 このコメントには、トヨタのトップがトヨタ全体について、事業モデルを「メーカー」のものから「サービス企業」のものへ変えていくという意思が明確に示されている。

 そして豊田社長は、時代の変化を以下のようにとらえている。

 ――100 年に一度の大変革の時代を「100 年に一度の大チャンス」ととらえ、これまでにないスピードと、これまでにない発想で、自分たちの新しい未来を創造するためのチャレンジをしてまいります[3]。――

 今年は、1885年にゴットリープ・ダイムラーが木製の二輪車に園児を乗せ試走に成功(1886年にカール・ベンツがガソリンエンジンの三輪車を販売)してから133年後に、フォード社が1913年に史上初の自動車製造コンベヤーラインを完成させてから105年後にそれぞれあたる。そうした時間軸を考えると、今回トヨタは自動車産業のビジネスモデルを再構築するような挑戦をしているといえる[4]

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