SDGsから考える持続可能な社会

パネルディスカッション SDGsとESG投資

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<パネリスト>

水野 弘道 氏(年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事 兼 CIO(最高投資責任者))=写真左

柳 良平 氏(エーザイ 常務執行役CFO 兼 東洋大学客員教授)=写真中

笹谷 秀光 氏(伊藤園 常務執行役員 CSR推進部長)=写真右


<コーディネーター>

円谷 昭一 氏(一橋大学大学院 商学研究科 准教授)


日本企業の評価改善

円谷(コーディネーター) 資本市場の現状と、「環境」「社会」「企業統治」を重視するESG投資を推進している理由を聞きたい。

水野 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は150兆円の資金を世界で運用し、市場全体を幅広く保有する。我々にとっては市場が長期的に持続可能であることが重要。市場の底上げを図る意味でESG投資を進めている。

 欧米がリーマン・ショック後に提唱した持続可能性や包摂性といったキーワードは、日本企業が従来掲げてきた「三方よし」経営に通じる。ESGを重視した経営の実践という意味で日本は後れをとっておらず、実際、今年に入って日本企業のESG評価は主要国最速で改善している。

 ESGを考慮する投資家からみると、SDGsを活用してビジネスモデルを打ち出す企業は魅力的だ。ESG投資とSDGsを結びつけて推進するプロジェクトは、今では国連や責任投資原則(PRI)も多く立ち上げている。

円谷 SDGsやESGをどう経営に組み込むのか。

 投資家は資本効率を重視するが、日本企業は「ESGなどの非財務」を重視する。当社は両者をつなぐ企業理念を10年以上前から定款に定め実行している。つまり、SDGs3番に関連した患者様貢献を会社の使命と考えるが、事後的長期的に自己資本利益率(ROE)、配当などで株主も報われるという理念を定款に規定して株主と共有している。CSV(共有価値創造)経営のみならず企業年金でもESG投資、スチュワードシップ(機関投資家の受託者責任)を採択してESG投資を前向きにとらえていくべきだろう。

笹谷 企業の社会的責任にはもともと経済、環境、社会があったが、ガバナンスの重要性からESGとなった。SDGsは、17目標をチャンスとリスク回避の両面から活用すれば、CSVを念頭に置いた競争戦略に使えるものだ。

 CSRにCSV、ESG、SDGsを全てまとめて非財務情報の統合化を提言したい。持続可能性の共通言語であるSDGsを活用し、情報開示も強化して「発信型三方よし」構造を作れば日本型CSVになるだろう。

円谷 企業価値向上につながる具体的な取り組みは。

笹谷 昨年フォーチュン誌でも評価された茶産地育成事業は、SDGsの目標2番「持続可能な農業」、8番「雇用創出」、12番「作る責任・使う責任」に該当する。伊藤園の価値連鎖(バリューチェーン)にSDGsを当てはめるとほぼ全てに関係している。世界のティーカンパニーを目指し、環境、健康、地域課題に重点を置いていく。

 医薬品アクセス向上に取り組んでいる。例えば、1億人以上がリスクにさらされる顧みられない熱帯病、フィラリア症の薬を世界保健機関(WHO)と組んで20年までに22億錠無償提供する。制圧を目指し、1番「貧困を無くす」、3番「全ての人の健康を」、17番「パートナーシップ」を訴求する。

日本がリーダーに

円谷 日本企業はESG投資にどう対応すべきか。

水野 ESG投資は欧州がリードし、GPIF含む日本の投資家、企業が一体となって日本がリーダーになれることを証明する段階だ。日本企業はESGやSDGsを活用して、今あるビジネスモデルを説明するところから始めればいいのではないか。

笹谷 伊藤園統合レポート2017でESGとSDGsの関係整理を示した。国際的枠組みを使いこなして情報開示も進めていく必要がある。

 非財務資本と、ROEと株主資本コストの差を指す「エクイティ・スプレッド」の同期化モデルを提唱する。企業の訴求するESGと投資家の求めるROEを同期化し、双方が長期的恩恵を得る環境が重要だ。

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