SDGsから考える持続可能な社会

パネルディスカッション SDGsに挑む企業 新たな時代の開拓者

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<パネリスト>

十倉 雅和 氏(住友化学 社長)=写真左上

瀬戸 欣哉 氏(LIXIL グループ取締役 代表執行役社長兼CEO)=写真中上

吉宮 由真 氏(味の素 常務執行役員 日本コーポレート本部長)=写真右上

出雲 充 氏(ユーグレナ 社長)=写真左下

前田 徹 氏(国際協力機構(JICA) 理事)=写真右下



<コーディネーター>

刀祢館 久雄(日本経済新聞社 上級論説委員)

世界各地で取り組み

司会(コーディネーター) SDGsへの具体的な取り組みをうかがいたい。

十倉 2006年から、マラリア防除のための蚊帳を製造する事業をタンザニアで開始した。現地での雇用創出と女性の経済活動への参画につながり、貧困、ジェンダーなど社会課題の統合的解決にも貢献している。売り上げの一部でアフリカの教育も支援している。総受益者数は、12カ国で1万2000人にのぼる。

瀬戸 20年までに1億人の衛生環境を改善するのが目標だ。開発途上国向けの簡易式トイレを開発し、世界15カ国以上で約120万台提供してきた。現地のパートナー企業が生産・販売・施工を担うことで、雇用を創出し、事業を継続的に定着させることができている。

吉宮 ガーナの子供たちの発育不全を解決するため、伝統的離乳食ココに添加するサプリメントを開発した。現地で製造した製品を女性起業家が対面販売して、女性たちに現金収入をもたらしている。ベトナム・ハノイ医科大学には栄養・食品の研究講座、栄養学士養成講座、奨学金制度を創設。小学校を対象とした学校給食プロジェクトも行っている。

出雲 当社はバングラデシュの栄養失調をなくすために作ったベンチャー企業だ。CSRの一貫としてSDGsを始めたのではなく、SDGsに関わることが本業である。ミドリムシの給食開始には困難を極めたが、ハラルの認証マークを付けたことで現地の人々が食べてくれるようになった。現在は42校、8000人の子供たちがこの給食を食べ、栄養状況の改善に取り組んでいる。また、現地の農家に日本の農業技術を導入し、緑豆を栽培。半分は日本に持ち帰り、高付加価値のもやしとして販売する。ブータン王国での事業調査も進めている。

前田 JICAには「人間の安全保障と質の高い成長の実現」というミッションがあり、SDGsの目標と合致する。今後も様々な民間企業と積極的にパートナーシップを組み、インパクトのある新しいものを追求したい。

貢献には覚悟が必要

司会 社会貢献と収益性のバランスはどうか。

十倉 いかに採算をキープしながら技術革新を織り込み、サステナブルに事業展開できるかを常に考えるべき。我々への期待は生半可なものではない。覚悟が必要だ。

瀬戸 どんな状況でも持続できるよう、採算が取れる自立した事業にするべきだ。採算が厳しくとも次につながる要素を探すなど、広い目で見るようにしている。

吉宮 ガーナのケースを例に挙げると、事業サイズは小さいが次の事業展開につながるものだ。プロジェクトそのものがほかの途上国の社会課題を解決するモデル型となるので、我々が得るものは大きい。

出雲 ベンチャー企業は資金、人材、リソースが制約されるので、収益性がなければ事業ができない。したがって赤字にしないという危機意識が高く、メンバーは必死だ。それが非常にいい形で作用している。

前田 日本企業が途上国でビジネスを展開すること自体が、途上国の生活の改善、雇用創出、国の成長につながる。収益を上げることはビジネスが持続するための前提条件。広い視野を持って途上国へのインパクトを考えたい。

司会 SDGs関連事業で困難な点と解決法、今後の目標や課題なども聞かせてほしい。

十倉 ビジネスをきっかけに複合的、統合的な効果が出ることを痛感した。問題は今後SDGsにどういう形で貢献し、どこまで応えるか。後発メーカーによる価格低下も問題だ。例えばマラリア以外の感染症にも応用するなどの展開が必要となる。

瀬戸 トイレを作って終わりではなく、維持・メンテナンスも大きな課題だ。我々だけでは不可能なので、パートナーを巻き込まなければならない。

吉宮 ステークホルダーと共有できるテーマ設定が重要。次に、どんな社会貢献をしたいかという非財務目標を分かりやすく、グローバルに発信すること。人的資本への投資も必要だ。

出雲 ベンチャー企業が途上国で活動するには、現地での信頼が厚い人たちのエンドースメントやサポートが不可欠。大企業、ベンチャー、JICA、政府機関などと連携し、良い補完関係ができるオープンイノベーションを進めたい。

前田 途上国政府の信頼をアセットにしつつ、企業が途上国でSDGs事業を展開する際の課題の解決を支援できるよう、協力を働きかけることが大変重要だと考える。

司会 SDGsに本業として正面から取り組む覚悟を持つことは、企業社会の将来にとって重要なキーワードとなる。

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