勝ち抜く中小経営への強化書

働き手の気持ちに応える離職防止策 日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 海上 泰生

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チーム活動を強力に促す仕掛け

 最近は、人付き合いが苦手な若者が増えたといわれます。彼らが周囲に溶け込めずに離職に至る事態を避けるには、疎外感を抱かないようにしなければなりません。そのためには、従業員間でチームワークが強まる仕組みやイベントを企画するなど、相互理解を半ば強引にでも後押しする仕掛けが有効です。

 例えば、D社(飲食店チェーン、東京都)は社員同士で協力することが必ず必要になる「クレンリネスコンテスト」を開催しています。各店舗のすべての設備や什器(じゅうき)・備品の清潔度を競うもので、結果をランキング形式で発表します。社内の注目度は高く、自店舗の順位を見た店員が「改善のためにがんばりしょう」と、店長を逆に鼓舞するケースもあるそうです。大きく順位を上げた店を「ジャンプアップ賞」として表彰すると、次には10位以内、さらには優勝を狙うようになるといいます。目標を共有し、各人が自分の問題として向き合うようになるため、一体感が生まれ、定着率も向上するのです。仮に、売り上げのランキングで競うとすると、店舗の立地など所与の条件の有利・不利が出てしまいますが、清潔度を指標にしているので、チームの努力の結果が直接かつ平等に反映され、士気が高まるのです。

 前出のC社でも、作業時間の短縮をはじめとした現場での改善の成果を報告する社内コンテストが毎月あり、複数のチームが社長の前でプレゼンしています。現場で働く社員たちは、自ら考えて改善した事柄に光が当たると、やりがいを感じるようです。

 また、E社(航空貨物取扱業、千葉県)では、「グッドジョブ賞」と称し、挨拶が良い、ミスを防いだなど、日常の細やかな功労を褒め、洗剤などの日用必需品をプレゼントしています。部門ごとに職長の権限で選ぶことができ、月に何度も行われるため、全員に受賞のチャンスがあり、現場の一体感を高めることにつながっています。

意外に有効な従来型の行事による親睦や交流

 昨今、コスト削減や効率重視の動きのなかで、社員旅行や運動会などの従来型の社内行事を行う企業はかなり少なくなりました。しかし、離職防止に効果をあげている企業では、こうしたイベントを重視する例は意外に多くあります。

 例えば、美容業のB社では、全社で楽しむイベントを頻繁に開催しています。最近では、家族連れで2泊3日のキャンプに行きました。子どもたちの夏休み期間はあいにく店の繁忙期に当たりますが、あえて3日間休業して実行しました。このほか、運動会や養護施設で児童と触れ合うボランティア活動なども行っています。子どもたちに喜ばれた満足感と、社会のために頑張った結果が得られて、皆でやりがいを実感するそうです。

 また、F社(建設機械・鉱山機械製造業、佐賀県)は海外や遠方に行く大規模な社員旅行を実施しており、E社もバーベキューや旅行、食事会などを頻繁に実施しています。古くからある手法ですが、社内の交流を促す効果は高いようです。

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