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働き手の気持ちに応える離職防止策 日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 海上 泰生

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 現在の人手不足はかなり深刻です。採用も大事ですが、苦労して何人かを獲得できたとしても、その人数以上に辞められてしまえば意味がありません。仮に離職が相次げば、社員に優しくない企業とみなされ、ますます求人が難しくなるでしょう。今日、離職の防止は喫緊の課題といえます。

最も多いのは、収入面での不満

 働き手が会社を辞めたくなる理由は何でしょうか。日本政策金融公庫総合研究所とみずほ総合研究所(株)は2017年、就業者5040人に向けたアンケート(※1)を共同で実施しました。

 現在の勤務先で働き続けたくない理由をみると、「収入・昇給に対する不満」(21.3%)が最も多く、2位の「労働条件・労働時間・休暇に対する不満」(8.3%)の2倍以上の回答割合になっています(図1)。7位に「他社で、より希望にかなった仕事に就く」と前向きな回答がみられるものの、6位までは収入、労働条件、人事評価、仕事内容、人間関係などに対する不満となっています。ただし、多くの人が不満を抱えてはいますが、当然ながら調査時点の勤務先で継続勤務している状況です。

(※1)調査対象は全国の民間企業の正社員。調査実施時期は、2017 年10~11月。調査方法はウェブアンケート。

図1 現在の勤務先で働き続けたくない理由(複数回答)

 では、なぜ離職しないのでしょうか、理由をみると、最も多いのは、「不満な点は多いが、辞めるまでにはいかない」(28.7%)であり、次いで「多少、不満な点はあるが、満足のほうが多い」が25.5%、「転職先そのものが容易にはみつからない」が21.8%、「他社では、今以上の条件は望めそうにない」が20.5%となっています(図2)。一方で、「今の会社に、ほとんど不満がない」は、15.4%にとどまります。

 こうした回答をみると、会社に対する不満はありますが、満足できる点もそれなりにあり、転職の難しさや条件面の厳しさを考えると、離職するほどではないという意識がうかがえます。図1のとおり、収入面への不満を訴える人が多いのは確かですが、それだけで離職行動に直結するわけではなさそうです。収入面で不満がないと言い切れる人はあまりいないでしょうから、今より高い賃金を望む社員が多いのは自然なことかもしれません。

図2 現在の勤務先で働き続けている理由(複数回答)

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