小さなサービス産業の高付加価値経営

サービス産業の生産性はなぜ低いのか 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 藤田 一郎氏

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 延岡教授は、製造業が目指すべき価値創出は商品価値から顧客価値の方向へシフトしていると指摘しています。こう考えると、高付加価値を生み出す小さなサービス産業の経営戦略は、大企業に比べて生産性が低いといわれる中小製造業者や中小建設業者が、現状を打開するための糸口にもなりうるのではないでしょうか。

 本連載で紹介する6社は、次の二つの条件を満たしています。一つは、従業者数(代表者、常勤役員を含む正社員、パート・アルバイトなど非正社員の合計)が20人以下の小さな企業です。

 もう一つは、高付加価値を生み出していることです。本連載では、従業者1人当たり売上高と売上高総利益率に注目しました。この二つの指標の両方、あるいはどちらかが業界平均値(当研究所が実施している「小企業の経営指標・2015年度調査」のデータ)を上回っている企業を、高付加価値を生み出している企業としました。

 従業者1人当たり売上高と売上高総利益率を掛けると従業者1人当たりの粗利(売上高総利益)になります。粗利は付加価値額とほぼ同義ですから、両者の積は付加価値額を労働投入量で割った労働生産性とみることができます。

 従業者1人当たり売上高を横軸、売上高総利益率を縦軸にとると、図のようなボックス図を描くことができます。さらに横軸と縦軸に業界平均値を置いて垂直水平に2本の線を引くと、業界平均値を中心とした4象限ができます。このうち、オレンジ色で塗った部分に位置している企業が、本連載で紹介する、高付加価値を生み出している企業になります。

生産性があがらない要因

 どの企業も図のオレンジ色の部分、可能なら右上の第1象限を目指したいところですが、これは容易ではありません。業界によって標準的なコスト構造や取引条件があるからです。飲食店の場合、原価率の業界標準は3割といわれています。各企業は業界標準をもとにして収益計画を立てますから、計画達成に必要となる店舗面積、用意すべきテーブルや椅子の数、そして目標稼働率などは自ずと決まってきます。

 取引条件の例としては、小売業がわかりやすいでしょう。小売業の場合、取り扱う商品によって仕入価格、つまり原価率がおおよそ決まっていますから、同じような商品を、他社よりも高い価格で売ろうとすれば、顧客はより安い価格を提示している企業に流れてしまいます。一方で、同じような原材料を他社よりも安く仕入れようと交渉しても、取引先は簡単に認めてくれないでしょう。

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