小さなサービス産業の高付加価値経営

サービス産業の生産性はなぜ低いのか 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 藤田 一郎氏

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 日本経済の成長に欠かせないのが、中小企業、特にサービス産業の労働生産性向上でしょう。労働生産性(以下、生産性といいます)とは、企業が生み出した付加価値額を労働投入量で割った指標です。生産性向上のためには、分子の付加価値額を保ったまま分母の労働投入量を減らすか、労働投入量を保ったまま付加価値額を増やす必要があります。多くの中小企業はすでにギリギリの人員で事業を営んでいますから、労働投入量の削減は容易ではありません。そう考えると、今ある経営資源でいかに付加価値額を増やすかがカギになります。

 本連載では高付加価値を生み出すことで生産性を高め、業界で存在感を発揮している小さなサービス産業の企業事例をもとに、高付加価値を生み出す差別化の視点、そして、ほかにはないユニークなサービスを軌道に乗せていく過程を「発見」「実現」「維持」に分けて、それぞれのポイントを探っていきます。

サービス産業に注目する4つの理由

 まずは、サービス産業に注目する理由を整理します(本連載では、第3次産業をサービス産業と定義します)。一つ目は、経済のサービス化です。わが国のGDPや事業所数の産業別構成比からは、第3次産業の存在感が高まっていることが確認できます。日本経済が今後も成長を続けていくためには、サービス産業の生産性向上がカギになります。

 もっとも、サービス産業の生産性は製造業に比べて低いのが現状です(中小企業庁、2016)。製造業は機械による労働力の代替がしやすい、規模の経済性が働きやすいことなどが主な理由です。他方、サービス産業内でみた場合、企業規模別にみた生産性の格差は製造業ほど大きくないとのデータもあります(中小企業庁、2016)。つまりサービス産業のなかには、大企業を上回る生産性をあげている小さな企業もあると考えられます。こうした企業の取り組みには、生産性向上のヒントがあるはずです。これが二つ目の理由です。

 三つ目は、消費者の志向の変化です。消費者庁(2016)は、総務省「家計調査」のデータから、家計におけるサービス支出の割合が高まっていることを指摘しています。いわゆる「モノからコトへ」という新たな潮流は、サービス産業を営む事業者にとって大きなチャンスといえるでしょう。

 そして四つ目は、製造業のサービス化です。ベースにあるのは「サービス・ドミナント・ロジック」です。これは、商品がもつ価値(商品価値)と、顧客がそれを使用することで生じる価値(顧客価値)を一体的に「サービス」ととらえるもので、製品や商品の役割はサービスを顧客に届けるための媒体にすぎないという考え方です(延岡、2017)。

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