日経SDGsフォーラム

経営にSDGsの観点を、イノベーションの種にも 日経SDGsフォーラム シンポジウム(下)

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■先進企業・団体の取り組み SDGsの最前線から
◇パネリスト
国際協力機構(JICA) 理事 山田 順一 氏

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
 SDGsタスクフォースリーダー 川廷 昌弘 氏

日経BP社 日経ESG編集長 田中 太郎 氏

◇コーディネーター
日本経済新聞社 上級論説委員 刀祢館 久雄

 司会 まずはどんな活動を行っているのか聞きたい。

途上国と企業とをつなぐ 山田 氏

 山田 JICAは政府開発援助(ODA)を扱っている。インフラ建設など途上国を中心に154カ国で事業を行っている。昨年度は専門家1万人以上を途上国に送り、途上国から1万7千人の研修員を日本に受け入れた。年間1400人の青年海外協力隊を世界中に派遣している。

 こうした拠点や人材、ネットワークを企業の途上国展開に役立てたい。具体的には民間企業からの提案事業、案件化調査やパイロット事業など年間80億円前後、100社程度を支援している。

価値観の共有進展に期待 川廷 氏

 川廷 博報堂でSDGsを担当する一方、日本企業のプラットフォーム組織、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンでSDGsに取り組んでいる。国連グローバル・コンパクトは、SDGsをはじめとする目標達成に向け活動し、280以上の企業・団体が署名している。大きな取り組みとして企業へのアンケートやインタビュー調査を行い、SDGsが企業の社会的責任(CSR)担当者の86%に定着していることがわかった。経営層では36%、中間管理職では9%だ。

 経営層にはSDGsの必要性が浸透してきた。地方の中小企業への浸透は遅れているが、内閣府の自治体SDGs推進事業では3年間で90自治体がSDGs未来都市として選ばれる予定だ。今後は地方自治体との連携で多くの企業と価値観の共有を進めていけるはずだ。

イノベーションの種にも 田中 氏

 田中 これまでは企業内で何のために事業をやっているのか話し合う機会が不足していたのではないか。環境部門やCSR部門がリポートなどを出しても、結果として企業価値を高められたという点を説明しづらかったのではないか。

 説明しやすいシナリオを与えてくれたのがSDGsだ。投資家などステークホルダーにも効果を説明しやすくなり、社内の共通理念としても機能する。社会課題を発見したら、解決のために事業を起こし、イノベーションの種にもなるといった役割が期待できる。

 司会 本業のビジネスを通じてSDGsに取り組むとはどういうことか。企業がグローバルに事業を展開する上でどういった取り組みができるのか。

 川廷 博報堂はSDGsの日本語アイコンをコピーライターと国連広報センターと一緒に翻訳した。公式の翻訳がなければ個人がそれぞれ翻訳してしまう。翻訳がバラバラになると共通であるべき認識が共有できなくなるという焦りから、当社の社会的責任と考えた。こうしたことがきっかけで早くからSDGsに取り組むことができ、今はSDGsコーポレートプログラムなどを開発して事業を進めている。

 山田 6年ほど前から始めた提案型事業への中小企業からの関心が急速に高まっている。途上国での事業は企業の活性化につながる。社員のやりがいも高まって定着力が上がったという。事業後に技能研修生を日本で受け入れる企業も多く、途上国とのつながりが地方活性化にも役立つ。途上国は成長市場でもあり、地方銀行の関心も高い。

 司会 グローバルに事業を展開する場合、リスクも伴う。サプライチェーンに途上国の児童労働が含まれればネガティブな影響を与える。どういう点に気をつけるべきか。

 田中 チョコレートやカップ麺に使われるパーム油は栽培する際、森林が破壊されることがある。森林を破壊せずに生産したパーム油を認証した製品を使おうというのが、世界の流れだ。欧州連合(EU)は2020年までに認証パーム油に切り替える方針だ。

 国内でも流通企業の一部がプライベートブランド(PB)商品の原料を認証品にする計画だ。ただ、持続可能な商品を使うべきという流れが強まれば取り合いになるだろう。

 リチウムイオン電池の電極材料に使うコバルトも要注意だ。アフリカ中央部のコンゴ民主共和国に生産が偏っているが、児童労働が問題になっている。電気自動車やスマートフォンを生産する企業にとって、この問題をどう解決するのか。危惧している。

 司会 CSRには収益の一部を社会に還元する社会貢献事業というイメージがあった。SDGsは、本業で社会貢献し収益を得ることで株主や投資家のためになる。そのためにどのように取り組むべきか。

 川廷 SDGsに取り組む際、事業の中で商品やサービスがきちんと社会に役立つように考えることが求められる。一方、CSRのような社会貢献は長期の視点で見る財務として、コストではなく投資と考える。すべてを有機的にとらえ、企業が社会的責任を果たしていくのが理想的だろう。

 SDGsはあくまでもコミュニケーションツールだ。うまく使って企業の社会的責任を伝え、事業発展と価値創出ができればよい。

 山田 JICAの役割は途上国の需要と企業のノウハウをつなぐことだ。あるメーカーの場合、ただ製品を売るのではなく、インドネシアの技術者を日本に呼んで工事の段取りや安全性の確保について教育するなど、技術を支える文化も輸出した。製品プラスアルファのパッケージ輸出で成功している。途上国のニーズをつかむこともSDGsビジネスでは大切だ。

 田中 CSRは収支を無視して社会貢献すればいいという話ではない。本業を進めていく上で「この事業に正義はあるのか」と問い直すことがCSRだ。本業と組み合わせる意味でCSRとSDGsは、全く同じだ。

 投資家に説明するためにはSDGsは優れたツールだ。ESG投資が高まれば高まるほど、SDGsをうまく使いこなそうという動きも増えてくるだろう。SDGsの概念が中間管理職に広まっていないということだが、利益が出てリスクをヘッジできると分かれば社員は納得するはずだ。オープンイノベーションで様々な化学変化が起きることを期待している。

日経SDGsフォーラムは伊藤忠テクノソリューションズ、住友林業、大和証券グループ本社、野村アセットマネジメント、りそなグループ、他の協賛で運営しています。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、経営、CSR、CSV、ESG、環境問題、SDGs

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