日経SDGsフォーラム

経営にSDGsの観点を、イノベーションの種にも 日経SDGsフォーラム シンポジウム(下)

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 持続可能な開発のため2030年までに達成すべき目標として国際連合が採択したSDGs。気候変動などの環境対策や貧困、飢餓の撲滅などを目指す。日本経済新聞社は7月31日、都内でSDGsを巡る課題を考えるシンポジウムを開催。政府関係者や学識経験者、企業経営者、自治体トップが議論を深めた。

■基調講演
日本経済団体連合会 企業行動・CSR委員長、損害保険ジャパン日本興亜 会長
二宮 雅也 氏
「企業行動憲章」を改定

 経団連は最重要課題の一つにSDGs達成に向けた企業の取り組み推進を掲げている。国際連合が定めた世界を変えるための17目標には、誰一人として取り残さないという強いメッセージが込められている。未来社会を指すコンセプト「Society5.0」実現を通じたSDGs達成を目指す。

 デジタルと現実が融合した新しい社会は、最先端技術が人間を支配し、一部の先進国だけが恩恵を享受するものであってはならない。革新技術を通じてあらゆる課題が解決され、社会、経済、環境と人間が調和した未来社会実現が重要だ。このコンセプトに基づき、「企業行動憲章」を改定した。前文に「企業は持続可能な社会の実現をけん引する役割を担う」と明記し、4条「人権の尊重」を新設した。SDGsに資する企業のイノベーション事例を掲載した特設サイトも開設。7月にニューヨークで開いた「SDGsビジネスフォーラム」で高い評価を受けた。

 SDGs採択から3年が経過し具体的成果や行動を求める声が高まるなか、人類が目指すべき社会の究極の姿であるSDGs達成に向けて全力で取り組む。

■企業講演
大和証券グループ本社 常務執行役
荻野 明彦 氏
経営にSDGsの観点を

 当社が今後100年間、事業活動を継続させるため、SDGsは経営上避けて通れない課題であると同時に、ビジネスのヒントが詰まっている。当社は創業以来社会貢献精神を受け継いできたが、2000年以降は本業を通じた取り組みを強化している。

 社会課題解決を目指すプロジェクトや企業に対し投資を通じて支援するインパクト・インベストメント、SRI投資信託、発展途上国の子供にワクチンを配るワクチン債の取り扱い開始などだ。この領域の投資商品の国内シェアは5割を超えている。

 当社グループが策定した中期経営計画では、経営戦略にSDGsの観点を取り入れている。この中で「大和証券グループSDGs宣言」を公表した。共通価値の創造、ステークホルダーとのパートナーシップ、多様な人材育成と働き方の実現、SDGsそのものの認知度向上と浸透を定めている。

 証券業界もSDGsに取り組んでいる。日本証券業協会は、SDGsで掲げる社会課題に向けた懇談会を設置した。投資行動がSDGs達成に向け、どう貢献するかを議論・検討している。

 SDGsに関連するグリーンボンド(環境債)は14年以降、大手企業の投資表明を契機に市場が拡大している。環境省がグリーンボンドガイドラインを策定したことでさらに拍車がかかるだろう。課題解決のため資金提供が円滑に進むよう、SDGs市場の活性化をけん引していきたい。

■基調講演
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 理事長
高橋 則広 氏
世銀とESG投資を研究

 GPIFのポートフォリオは株式が半分、4割は外貨で運用・長期保有し、インカムゲイン(利息収入)で利益を出すのが基本方針だ。キーワードは「ユニバーサルオーナー」「超長期投資家」で、100年後を視野に運用する。

 総投資額は160兆円以上。上場企業の株式をほぼ保有している。持続可能な社会は長期的リターン向上につながると考え、「環境」「社会」「ガバナンス」の要素に配慮したESG投資を行っている。GPIFは株式を直接保有せず、外部の運用会社を通して投資するため、ESGやSDGsを考慮した投資を運用会社に促している。

 具体的には、上場企業向けアンケートの実施、ESG投資に関するフォーラム開催、ステークホルダーなどとの連携を進めている。東証1部上場企業を対象に機関投資家の行動指針を指すスチュワードシップ活動に関するアンケートを実施したところ約3割にあたる619社から回答を得た。アンケートを通じて企業との対話を増やす考えだ。

 財務と非財務情報を融合した「統合報告書」で優れた企業や改善度の高い企業も公表している。昨年はESG指数を作成、ESGの行動レベルを上げると指数に入り、指数に入ると株式投資が増えるという好循環を狙っている。

 債券分野では世界銀行と共同でESG活用に関して共同研究を始めた。ESGやSDGsに関する取り組みは一時的ブームで終わらせず、継続して粘り強く行っていく必要がある。

■基調講演
一橋大学 大学院 経営管理研究科 特任教授
伊藤 邦雄 氏
「ROESG経営」実現へ

 SDGsに関して3つのうねりが起こっている。1つ目は金融機関を含めた民間の参画が進み、社会全体が持続可能性に関心を持ち始めていることだ。2つ目は、企業価値を決めるファクターが有形資産から無形資産に変わってきている点。3つ目には長期投資家の存在感が高まっている。

 長期投資家が関心を持つのは、環境変化や危機に際し、柔軟に対応できる持続可能なビジネスモデルか否かだ。昨年、長期投資家の代表格であるGPIFが「ESGインデックス」を発表したのが象徴的といえる。

 企業が取り組む3つのフェーズを整理してみた。第1に企業活動とSDGs目標との連携を「見える化」し、モニターする。第2は事業計画に組み込み、成長戦略につなげる。第3は中長期の社会貢献目標を戦略的に考え、新しいビジネスモデルを準備する。この第3フェーズまで目指すべきだ。

 リスクと機会を社会や投資家に理解してもらうことも必須だ。SDGsの中でも最重要テーマは、気候変動だ。低炭素経済に移行する際にはリスクと機会を伴い、企業の財務に重大な影響を与えるからだ。企業には的確な情報開示が求められている。

 同様に資本生産性を示すROE(自己資本利益率)を世界標準まで高めてほしい。私はこの両輪を「ROESG」と呼んでいる。ROESG経営を通じ、企業と投資家が一体で企業価値を持続的に創造していくことを期待している。

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