BizGateリポート/技術

脳科学、法律学…「将棋思考法」に脚光 中村王座・片上七段対談「将棋の可能性を読む」(上)

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 片上「この前の7一歩は何を考えていたの?(前期王座戦で中村王座が1時間を大幅に超える長考で指した手)」

 中村「最初の20~30分は、直感に基づいて攻める手を考えていました。しかしどう考えてもうまくいかない。そこで別の手を探しているうちに発見した、守りの手です」

 中村「しかし直感に反する手なので、形勢が悪くなる手があるはずだと思って、また30分考えました。結局見つからず、直感と読みの手が『バトル』してしまいました。最後は読みの手の方を選んで、それでも後悔しないかを確認するために10~15分使いました(中村王座が勝利した)」

「羽生竜王の中盤感覚はほかの棋士と違う」

 片上「最後に納得できるかどうかは影響が大きいです。決断するための理由が欲しいです」

 ――一般から見ると棋士はコンピューターのようにあらゆる可能性をしらみつぶしにしてから指し手を決めているように思えました。

 中村「どこまで選択肢を広げるかでしょうね。2通りくらいしか選ばない棋士もいます。渡辺明棋王はこのタイプでしょう。8通りほども考える人もいます。少ない選択肢の中で正解が必ず入っている人が、一番強いということになります」

 中村「ただ佐藤康光九段(永世棋聖)は非常に選択肢が多いです。だから例外的な正解の手が指せる、ハッとする妙手が出ることになります」

 片上「選択肢の多い局面自体が例外で、その局面で多くの選択肢を考える棋士も少数派でしょう。理研の研究では直感は鍛えられるものということも示されました。勉強次第で直感は磨かれるといいます」

 ――これからの脳科学研究と将棋はどう関わっていくのでしょうか。

 中村「共同研究を始めた時点で、将棋の直感に関しては3つの面を想定していました。(1)瞬時の理解(2)独創性につながるひらめき(3)大局観――です。人工知能(AI)が発展している現在、大局観をつかむことが人間の役割として重要だと考えています」

 片上「なぜひらめくのかは、私自身も大変興味があって、よく考えます。勝負では、最善手を見落すケースが出てきます。選択肢の中に入っていれば必ず検討するから、見落としはない。実際はプロでも『なぜこの手に気付かなかった』と思うことの連続です」

 ――将棋の独創性はどこから生まれるのでしょうか。

 片上「佐藤康光さんの棋風の話がありましたが、個人的に注目しているのは菅井竜也王位です。しょっちゅう訳の分からない手を出してくる。昨年の王位戦で羽生善治竜王をびっくりさせたのは大変な実績でしょう。日々何か新しい手はないかと、執念に近い感じで考えているのだと思います」

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。