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脳科学、法律学…「将棋思考法」に脚光 中村王座・片上七段対談「将棋の可能性を読む」(上)

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 ――話題を変えます。お二人とも首都大学東京の木村草太教授の元で、法学部の学生を教える非常勤講師です。木村教授は将棋の世界と法律学の共通点を(1)日々の動きから最新学説が生まれる(2)将棋も法律も全くの無からは生まれないーーなどと指摘しています。

 中村「最初は木村教授と私が対談したのがきっかけでした。将棋には『3手の読み』といった、筋道の立った思考法が基本です。思考法と思考の表現方法を法律文章の作成に生かそうというのが授業の狙いです」

 片上「1年で15回の講義を分担しています。教材は自分らでプリントを作成したりしています。中間・期末で指導対局を指して、受講している学生に棋譜を取って貰います。一局の分岐点を選んで、なぜこの手を選んだのか自分の考えをレポートに作成してもらっています」

 中村「将棋の実力は関係なく、基本ルールから教えています。今年の受講者は24人。男女比は約2対1ですね」

 ――採点の基準はどこに置いていますか。

 中村「論理的な思考ができていて他者に伝えられるかどうか、という点ですね」

 片上「レポートがちゃんとした文章であることが最初のポイントです。考えた内容が文章で表現できているかどうかですね。法律用語は必要ありません。木村教授を含めて個別に採点して、最後に3人合同で決めています」

 中村「それぞれの文章が論理的につながっており、最後に結論がしっかりしているレポートが高評価になります」

 片上「思考に飛躍があるケースと文章に飛躍があるケースがあります。言葉足らずもあります。そういう点があると評価が下がりますね」

 中村「大学生になると、ディベートではみなテクニックがあってそれぞれにうまい。将棋は一から覚えるので、さまざなテクニックが排除されて、本人の論理性だけが浮かび上がってくるという特徴があります」

リーガルマインド養成に将棋を応用

 ――将棋をリーガルマインドを養う授業に応用しているのですね。

 片上「3人で話し合いをしても個々の学生の評価が極端には分かれませんね。今年で4年目です」

 中村「レポートの質も、将棋が強くなるスピードも上がってきています」

 片上「最初はこちらも手探りで、教え方もまだ分からない部分もあったのですが」

 ――木村教授はプロ棋士の「感想戦」のように、自分を客観的に検討するノウハウを取り入れたいとしていました。

 中村「日常生活でもいっぱい決断しているはずですが、実際に良かったどうかをいちいち検討していることは少ないです。将棋は結果がすぐ表れますから」

 片上「将棋は判断したこと、判断に基づいて行動したこと、行動の結果のフィードバックがはっきりしている。法律関連の題材として向いていると思います。ほかの分野でも応用ができるかもしれません」

(聞き手は松本治人)

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