愛されシニアを目指すスキルアップ道場

教える気持ちがあればシニアも教え方は上達する トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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<5.相手を見ていない>

 最後に、これ。1.~4.で示したように拙い教え方をしてしまうのは、教え慣れていない人にとっては、ある程度仕方ないことである。だれでも最初は当てはまるところがあるものだ。より大きな問題は、教えた相手(後輩など)が理解していない様子に気づかないことだ。

 人は、わかっていないとき、絶対に表情や態度にそれが表れている。不安そうな顔をしたり、目がきょろきょろしたり、あるいは、「わかりました」という声のトーンに元気さがなかったりする。

 相手をよく観察していれば、「あれ?今の教え方では理解できなかったのかな?」「この説明では、腹落ちしないのかな?」と気づかなければならない。

 後輩たちは、先輩が説明してくれたことに対して、「わかりません」とは言いづらい。シニアのほうが、「もしかすると、わかりづらかった?」と問い掛け、相手が頷(うなず)いたら、どこがわからなかったのか振り返り、再度説明してみるといった配慮が必要だ。

 相手の理解度を確かめるためには、相手側に説明してもらうというのも手である。「今の説明でわかった」「はい」「だったら、一度説明してみてくれる?」と促す。誰かに説明することで相手の理解度を測れるし、説明しながら、教わった側も自分の理解のレベルを自覚できる。説明することで、「自分がわかっていることはここ」で「この部分がわかっていないのだ」とわかる場合もある。そうすれば、「ここからがわかっていないので、もう一度教えてほしい」と意思表示もできるだろう。

自分の仕事・知恵を上手に伝承することはシニアの重要な課題

 シニアには「世代継承性」という発達課題がある。発達課題とは、人が年代ごとに取り組み、達成すべき課題のことである。自分の仕事、自分の知恵を上手に伝承することが、シニアが取り組むべき課題の一つなのだ。

 せっかく30年近く、いや、それ以上のキャリアを重ねて来たのだ。自分が得たものは、上手に後進に伝え、仕事そのものや知識、スキル、あるいは、知恵を伝えていきたい。

 明治時代の政治家、後藤新平は、「金を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上」という言葉を残している。ピーター・ドラッカーは、「人に教えることほど勉強になることはない」と『マネジメント』という本に記している。教えることで、自らもまた学べる。新しい発見や気づきもあることだろう。人を育てること、人に仕事を残していくことは、シニア自身のためでもある。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 「シニアには、若手指導など任せられない。年齢は離れているし、感覚も違うし、教え方も下手だし」といった声をよく聴く。したがって、企業で主に若手社員を育てるOJT担当には20~30代の若手・中堅層がアサインされることが多い。もう少し年上だとしても、せいぜい40代までだ。

 以前お会いしたOJT担当者は、自ら志願したというアラフィフだった。「上司にどうしてもやらせてください」と頼んで、新入社員のOJTを1年間担当するのだという。なぜ?と聞けば、「30代のころ、OJT担当をしたんです。そのときは、若気の至りで、うまくいかない点もあり、反省点があります。今、50近くになって、経験も積んだので、もう一度、自分のためにも、もちろん、新人のためにもトライしたいんです」

 上司は渋っていたというが、彼の熱意に首を縦に振ったらしい。

 実際、こうやってシニア層でもOJT担当やメンター(同じ部署ではなく、他部署の人が若手の面倒を見る役割を指すことが多い)を担当すると、若手の話に耳を傾け、自分のやり方、考え方を見直したりして、若手から刺激を受け、シニア層が学び直しをしているケースも多い。また、若手も親子ほど年齢の離れた先輩と接することで、多様性を学び、年齢の離れた人の考え方を知ったり、年長者との会話を学んだりもしている。

 もし、シニアが「若手指導」「OJT担当」などに少しでも関心を示したら、上司の皆さんは、「ぜひやってください」と背中を教えてほしい。もちろん、時代に合わない指導をしないよう、「あなたが若かったころと考え方もやり方も違うんですよ」という点は押さえつつ、シニアにも活動の場を与えてみてはどうだろう?
田中淳子(たなかじゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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