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教える気持ちがあればシニアも教え方は上達する トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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 教え下手な人は、何が苦手なのか。以下に示す5つのポイントが代表的だ。

1.全体像を共有しない
2.理由や理屈を説明しない
3.文脈の違いを考慮しない
4.具体的でない
5.相手を見ていない

<1.全体像を共有しない>

 仕事を教える場合、担当する「ある作業」「ある部分」だけを教えられても、教わる側にはピンとこないことがある。「これはいったい会社のビジネスにおけるどの部分の話なのか」「前後の工程のそれぞれ何につながっているのか」がわからないと、教えられたことがいつまでもぼんやりしている。「わかったような、わからないような」な気持ちになる。何かを教える際、全体像、大きなところから説明するのは大事だ。

 料理で説明してみよう。「カレーの作り方を教える」場合を例にする。

 全体を共有しない人は、「では、ジャガイモを洗います」「次に、ジャガイモを切ってください」といった説明をしてしまう。

 「カレーを作る」という最終ゴールとカレー作りの全工程を一度概観したほうがよいのだが、突然、工程の一部である「ジャガイモを洗いましょう」「ジャガイモは、こんな風にみな同様の一口(ひとくち)大に切ってください」と言われても、「ジャガイモ」の切り方が理解できただけで、全体感は育まれない。

 このとき必要なのは、「カレーというのは、こういうもの」とゴールイメージを見せて(たとえば、写真で)、「材料を切るフェーズ、材料を炒めるフェーズ、カレールーで煮込むフェーズがある」といった全体の流れを説明する必要がある。さらに、「ジャガイモを切る」というのは、「カレー作成の工程では、材料を切るフェーズに当たる」といった前後関係も必要である。

<2.理由や理屈を説明しない>

 理由や理屈を説明しないというのは、カレー作りのケースで言えば、「ジャガイモはみな同様の一口大に切る」ことの理由や理屈を説明しないということに当たる。単に、「みな同様の一口大に切る」と言われても、その理由が理解できていなければ、間違えて覚えるかもしれない。あるいは、教わった側独自のアレンジが入る可能性もある。

 「一口大にする」のは、「食べやすくするため」や「火の通りを均一にするため」だといった説明があれば、「じゃあ、あまり大きくすると食べにくいな」とか「不ぞろいに切っては、柔らかさに差が出て、まずくなるからだな」といったことを理解できる。

<3.文脈の違いを考慮しない>

 文脈の違いを考慮しないとは、自分と相手の業務理解度の違いを考えないということだ。「自分の当たり前」を「相手にとっても当たり前だ」と思ってしまうことがそれに当たる。

 カレー作りのケースで言えば、「人参は乱切りすればいいから」「玉ねぎは、くし切りね」と説明した後、「あとはよろしく」というノリで託されても、「乱切り」「くし切り」という言葉とその方法を知らない人にとっては途方に暮れるだけだ。「乱切り、くし切りを知っていて当然だ」と思い込むと相手に理解不能な教え方になってしまう。

 仕事を教える場面で、この手の説明をしてしまう人は多い。自分が知っている言葉、考え方、やり方を誰もが「当たり前」と思いがちで、他者に教える際、つい、説明を省くのである。「当たり前過ぎること」は説明しないまま、相手に教えようとするが、相手は、もっと基本的な部分がわかっていないので、教えてもらっても、ぼんやりとしか理解できない。

 教わる側が、「乱切りってなんですか?」と尋ねればよいし、質問されたことで初めて、「あ、そのレベルからわからないんだね」と教える側も理解し、用語や考え方をより詳細に説明することができたりもする。だが、「そんなこと、自分で調べてよ。ネットに書いてあるでしょう」などと言って、説明の労を省く人もいる。

 しかし「調べてよ」と言う側は、どうやって調べればよいか、わかっているのだが、初心者・素人は、「調べ方」すらわからない場合もあるのだ。そこまで心を配りたい。

<4.具体的でない>

 教え下手な人は、あいまいな言葉をよく使う。「中火で煮込んで、だいたいいいなぁという感じになったら火を止める」といった説明をしがちだ。「だいたいいいなぁ」という表現が料理初心者には通じないのだ。「人参やジャガイモに竹串を刺して、抵抗なく突き抜けるようであれば、野菜は十分火が通っているから、火を止める」などと具体的に説明する必要がある。

 ある若手が言っていた。シニアの説明がどれもこれも抽象的で、何を言っているかわからないと。たとえば、「これさぁ、お客さん側とちゃんと話をつけておいてから、稟議通せばいいから」と言われても、「何をどう話をすること」が「ちゃんと話をつける」ことになるのかなど、具体的なことがわからないわけだ。

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