資料を用いて想いを伝えるのは決して容易ではありません。外資系コンサルティングファームなどの業務を通じて、資料作成の技術、特に図解とグラフの技術を身につけ、洗練させてきたルバート代表取締役 松上純一郎氏が、その考え方をお伝えします。第1回では、「一人歩きする」資料と図解の重要性について説明します。
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■「一人歩きする資料」の作り方
「プレゼンテーション」と「説明」では資料が異なる
私はコンサルティング業務の中で多くのクライアントの資料を見てきましたが、その多くが読み解くのに時間がかかる、わかりにくい資料でした。具体的には、「読み手にどういうアクションを期待しているかわからない」「情報が整理されておらず理解しにくい」「主張がわからない」などの課題があるものでした。
その背景には、多くの資料がプレゼンテーションや説明を前提に作られているということがあると思います。「資料がわかりにくくても、プレゼンテーションや説明で補足すればいいや」、場合によっては、「説明でうまくごまかそう」という考えが裏にあることもあるでしょう。
大学生の場合はより深刻で、スティーブ・ジョブズ氏や孫正義氏のように写真やイメージをたくさん貼り付けたプレゼンテーションを作ってきます。これは資料単体では成り立たないものです。
ここで強調したいのはプレゼンテーション資料と説明資料は異なるということです。プレゼンテーション資料というのは英語では「ヴィジュアル・エイド」と呼ばれます。つまり、「視覚的な補助」なのです。あくまでプレゼンターが主役で、そのプレゼンターのプレゼンテーションの内容を視覚的に補助するのがプレゼンテーション資料なのです。
スティーブ・ジョブズ氏や孫正義氏のプレゼンテーションはプレゼンターが主役ですので、写真やイメージが多用されており、文字は最低限にとどめられています。これは彼らが大企業の社長で、彼ら自身が商品、主役だからなのです。
しかし、多くのビジネスパーソンの場合は、自分が主役ではなく、説明する「資料」が主役で、プレゼンターはあくまでもその内容を説明する存在なのです。この場合、資料は「ヴィジュアル・エイド(視覚的な補助)」ではありませんので、資料はしっかりと説明の文章があり、単体で成り立つものである必要があります。