ドリルで学ぶ! 人を動かす資料のつくりかた

ジョブズ氏まねるな、図解で「一人歩きする」資料目指せ ルバート代表取締役 松上純一郎

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■図解の効果

図解が持っている4つの効果

 では、具体的にどのようにすれば少ない文字数でわかりやすく説明できるのでしょうか。1つの解決方法は図解を利用することです。実際に、文字ばかりの説明の場合と図解を用いた場合を比較してみましょう。どちらがわかりやすいでしょうか。

 図解のほうがわかりやすいことが一目瞭然かと思います。図解には4つの具体的な効果があります。1 つ目は「理解度が高まる」ことです。図解は論理を明快にする効果がありますので、内容に対する読み手の理解の質が高まります。2つ目は「時短」です。図解により理解度が高まるので、読み手が資料を読み解く時間が大幅に短縮できます。3つ目は「頭の整理」です。他人に説明するために自分の考えを図解にまとめると、思考が整理され自分の頭の中がすっきりすることがよくあります。

 最後の4つ目は「ユニバーサルである」ことです。図解はどんな教育レベルの人でも理解しやすいものです。例えば、私の講座に市役所で生活保護世帯を担当する方が参加されたことがあります。生活保護世帯の中には外国の方もいて日本語もままならない場合もあるようです。彼は図解ならうまく伝えられるということで一生懸命に勉強されていました。海外の仕事でも図解は非常に有効です。私がNGO の仕事でアフリカの国に長期出張した際、図解を多用した資料を用いて、現地パートナーとの契約を整理してうまくいった経験があります。このように、図解には日々の仕事を円滑にする多くの効果があるのです。

資料だけで終わらない図解の役割

 図解は実は資料以外にも利用することが可能です。1つがファシリテーションツールや会議での説明ツールとしての利用です。私がイギリスの大学院に留学していた時のことですが、クラスで小グループに分かれて討論を行う機会がありました。イギリス人の女子学生がファシリテーションを行っていたのですが、彼女は議論を促しながら、黒板に皆の意見を書いていきました。そして「この意見とあの意見はこういう関係で、あの意見はその意見の上位概念で……」と整理していき、最後には「私たちのグループが言いたいことはつまりこういうことね」とまとめてしまったのです。ファシリテーションの技術もさることながら、イギリス人の図解で物事を整理する力に舌を巻いたものです。

 私は日本に帰って外資コンサルティングファームに勤務し、そのあと「very50」という教育関係のNPO で学生や若手社会人のプロジェクト型の海外研修に引率として参加することになりました。この時、図解の技術は大変役に立ちました。実務経験が浅い学生や若手社会人にマーケティングの考え方などを口頭で説明してもなかなか伝わらないのですが、ホワイトボードに図解するだけで飛躍的に理解度が上がったのです。これは現在もコンサルティングの現場で活用しています。クライアントから自社の課題などを口頭で説明いただくと、私は社内用語への理解不足から内容を理解しきれないことがたまにあります。そうした際にクライアントの説明を図解しながら確認すると、誤解がなくなり生産性が非常に高まるのです。

 そしてもう1つが、考えるツールとしての図解です。図にまとめながら考えることで新たなアイデアが浮かぶということがよくあります。また曖昧な概念を図解していくということも非常に有効です。考える際には、自分の考えを実際に紙に書いて、客観的に見て修正を加えていくというのが非常に有効なのですが、そこでも図解が役立つのです。

松上純一郎著 『ドリルで学ぶ! 人を動かす資料のつくりかた』(日本経済新聞出版社、2018年)「1章 図解とグラフで人を動かす」から
松上 純一郎(まつがみ・じゅんいちろう)
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia 修士課程修了。米国戦略コンサルティングファームのモニターグループで、外資系製薬企業のマーケティング・営業戦略、国内企業の海外進出戦略の策定に従事。その後、NGOに転じ、アライアンス・フォーラム財団にて企業の新興国進出サポート(バングラディシュやアフリカ・ザンビアでのソーラーパネルプロジェクト、栄養食品開発プロジェクト等)や栄養改善プロジェクトに携わる。現在は株式会社ルバート代表取締役を務める。ルバートにて企業に対して中期事業計画策定等のコンサルティングを提供する一方で、自身のコンサルティング経験から、提案を伝え、人を動かす技術を多くの人に広めたいという想いで、2010年より個人向けの資料作成講座を開始。毎回キャンセル待ちが出る人気講座となっている。個人のみならず企業向けの研修サービスに拡大し、ビジネスパーソンに必要なスキルの普及と啓蒙に努めている。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、イノベーション、マーケティング

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