愛されシニアを目指すスキルアップ道場

シニアが持つ三つの強みとその使い方を考える トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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知識やスキル、知恵は「出し惜しみしない!」

 では、このような強みを生かすにはどうすればよいか。この連載のタイトルは、「愛されシニア」であるから、自分より年下の人たちから愛されるようになる強みの使い方を考えていこう。

 まずは、仕事の経験で得た、知識やスキル、あるいは、知恵については「出し惜しみしない!」というのが最も大事だ。

 若いころ、後輩が台頭してくると、後輩に何かを教えることに抵抗を感じる人もいる。私もそうだった。私が頑張って努力して身につけたものを、後輩に教えるなんて、後輩は努力せずにこの知識をもらえるのなんて、不公平だ、不条理だ。そんなことを言っている同僚もいた。しかし、これは青臭く、つまらないプライドだ。今になってそう思う。

 自分が得たものは、どんどん後進に渡していけばよい。全てが役立つわけでもないし(古過ぎて陳腐になっているものもある)、今でも通じるものであっても、教えたからといって、それを活かすかどうかは、後輩次第なのだ。

 気をつけないといけないのは、「教えてくれるのはいいんだけど、それ、昭和の考え方でしょう?」と思われないようにすること。日々、自分の知識や経験の中で現代でも通用するものかどうかは、棚卸しをしておくことだ。

 次に胆力、つまり鈍感力の使い方だが、これがある程度身についたシニアであれば、トラブル対応など、若手では焦ってしまうような場面でも堂々と振る舞えるだろう。役職者などとも普通に話せるようになっているシニアなら、手違いがあって謝るしかないような場面でも、焦らず、落ち着いて会話ができる。

 以前、同僚にトラブル対応を得意としているシニアがいた。彼は、何かトラブルがあると、張り切って顧客先に出向いて行った。トラブルというのは、たいてい、皆対応を嫌がるものだが(そりゃ、できれば、矢面には立ちたくないものだ)、彼は進んでトラブル対応を買って出ていた。これがフシギなくらいに話が丸く収まってしまうのだ。

 たぶん、若いころから切った張ったの経験をしてきて、様々な企業の文化も人の心や考え方もある程度推測できるだけの経験値があり、「こういう言い方をするのが最もうまく収まるだろう」という自分なりのセオリーをいくつも持っていたのだと思う。その上で、シニアならではの「胆力」で困難な状況に立ち向かう。そういう画面で矢面に立てるのもシニアならではだろう。

人脈は若手のためにも役立てたい

 人脈は、自分のために使うだけではなく、若手を含む他者のためにも役立てたい。

 私にとって、公に文章を書く初めての仕事は、日経BP社の新刊雑誌での連載だったのだが、その話は、最初、私の上司のところに持ち込まれた。上司は多忙を理由に断った上で、私を編集長に紹介してくれたことから私にチャンスが巡ってきた。年長者が持っている人脈はこうやって後輩たちを誰かにつなぐためにも使いたいものだ。

 そういえば、以前、ある企業のマネジャーと会食することになった際、「うちの若手を連れていっていいか?」と事前にメールを頂戴した。「もちろん!」と即答したのだが、当日現れたのは、新入社員だった。このマネジャー曰(いわ)く、「若いころから、こうやって他者の人との会食などの場に同席することは、きっと彼(彼女)のためになると思うので。自分もそうしてもらってきたから」とのこと。こうやって若い人をどんどん社外の人に引き合わせるのは大事なシニアの役割である。これは以前、「経験学習」(経験から学ぶこと)の研究で著名な北海道大学の松尾睦教授が話されていたことだが、「育て上手な上司の行動の特徴の一つに、“部下を他者に紹介する”というものがある」そうだ。人脈作りをサポートすることは、すなわち、人を育てることにもつながるということだろう。

 そうなると、当然、人脈を持っていなければならない。40歳も過ぎたら、社内の人間関係ばかり見ていないで、社外の人との交流を意識的に持つようにしたほうがよい。

 ちなみに、人脈とは、自分が誰かを知っていることを指すのではない。他者から自分が認識されていることが重要だ。たまに「あの人を知っている」と自慢げに言う人がいるが、相手が自分を覚えていないのであれば、この発言はただのミーハーである。

 こうやって書いて来て思ったのだが、単に歳を重ねただけではダメで、やはり、20代でも30代でもその時々で自分から進んで経験を積み、様々な知識やスキルを身に着け、大変な思いもし、成功も失敗もして、多くの人に出会ってきたその蓄積がシニアになってから役立つわけで、そういう努力をしてこなかったシニアには、後進のために渡せる知識も知恵も紹介できる人脈もない。今からでも遅くない。内弁慶をやめて、外に出よう!、シニア。そして、シニア予備軍の皆さん。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 シニアの知識や知恵、人脈は使わない手はない。「教えてくださいよぉ」と言われて、嫌な気持ちになるシニアはそうそういないはずだ。教えて欲しいと思うこと、紹介してほしい人を具体的に言うとよい。シニアはいつかいなくなるのだから、多くを吸収しておきたい。そして、年若い上司たちもまた、経験を積み、人脈を広げることをお奨めする。若くして管理職になってしまうと、内弁慶の芽が育ちやすいような気がする。自分を鼓舞して、どんどん社外に出て行くことだ。社外の人と交流し、自分がシニアになった時にまた、後進に役立つ情報や知恵を授けられるよう、今から頑張っておこう。
田中淳子(たなかじゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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