話を聴いていない、話が長い、説教やジマンが多いなどと、これまでシニアの色々な特徴を指摘してきたが、今回は、シニアの強みを生かすことについて考えてみたい。
シニアの強みとは何だろう?
まずは、「経験」が豊富であること。仕事での成功も失敗も、達成感もツラい思いも、喜びも悲しみも、とにかく様々な経験を重ねてきている。仕事に限らず、人生全般でも大波小波を乗り越えて50代に到達しているはずだ。長く生きてきた分、様々な仕事経験を積み、人生の節目を何度も乗り越えてきたという歴史がある。「こういう時は、こうすればよい」とか、「こんな場面では、こう対応するのがひとまずヤマを乗り越えるコツだ」といったことが、知恵として備わってきている。
多くの経験を通じて、多少のことには動じない「胆力」も備わってくる。胆力というほど偉そうに言えないなら、鈍感力と言ってもよいかも知れない。
若いころは、失敗すると焦ったり、戸惑ったりしたことであっても、シニアになると「まぁ、なんとかなるだろう」と思えるようになる。年齢を重ねたことで、感情に関するエネルギーが長続きしないこともあって、一晩寝れば、ストレスの原因をかなり忘れてしまうのもシニアならではだろう(このあたりは、もちろん、個人差があって、年齢と共に怒りっぽくなるという人もいるが、それは、もう少し歳を重ねてからの現象ではないだろうか)。
物怖(ものお)じしなくなるのも胆力の一つだ。
20代の頃、シニアな先輩たちが、社長や取締役、あるいは、部長と普通に話していることがとても不思議だった。どうして、緊張せずにそんなに偉い人と会話ができるのだろう?――と思った。自分がシニアになってみれば答えは簡単だ。経営者やマネジメント層が自分と同年代、あるいは、年若くなっていくから、別にビビる必要はないという気になる。社内の話だけではない。相手が社外の人、たとえそれが経営者であっても、臆することなく対等に話せるようになる。亀の甲より年の功。
シニアは、長年のキャリアの中で培ってきた「人脈」を持っているのも強みだ。社内人脈はさることながら、社外にもそれなりの人脈を築いて来ている(もちろん、内弁慶で全く誰とも交流せずにシニアになった人には、人脈はさほどないかも知れないが)。
経験、胆力、人脈――、こう言ったものはシニアの強みである。