日本的デジタル化の落とし穴

データ経済圏の主役、プラットフォーム企業の価値と未来(前編) 最終回 筑波大学・立本教授、楽天・河野常務執行役員、LINE・藤井執行役員、アクセンチュア・木原氏による座談会

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データ複合化が金融とつながり、新たな経済圏を生む

古嶋 プラットフォーム企業がデータ活用でディスラプションをリードし、さらに新しい類の「経済圏」が生まれています。金融業界側の視点を教えてください。

木原 金融業界でも、外部とのコラボレーションで新しいデータ活用の戦いが始まっています。金融機関はこれまで少額消費に関するデータについては他業界のプレイヤーも強みを発揮しつつあるものの、金額が大きい資産に関するデータについては自分たちのみが押さえているという自負がありました。しかし金融機関が持つデータはモノコトに対する「事後の結果」が大半です。顧客の行動予兆をとらえ、前広で提案をするには外部企業が持つモノコトそのものや、「事前の予兆」をとらえる必要があります。

古嶋 LINEさんは金融機関との業務提携を矢継ぎ早に発表されていますが、背景や狙いを教えていただけますか?

藤井 弊社には7600万人のユーザーベースがありますが、フィンテックのような先進的な金融サービスを推進するにあたり、我々のユーザー基盤というのが既存の金融機関にご評価いただいていることの一つだと考えています。特に、一般的に金融業界は若年層のお客様の獲得は課題かと思いますが、弊社との協業を通じて、まずはユーザーに金融商品を身近なものと感じていただき、幅広いユーザーに向けてアプローチができればと考えています。

 提供する金融サービスも工夫します。弊社が損保ジャパン日本興亜と業務提携して開発している保険は、LINEアプリ内のメニューで買えるような手続きと料金体系にする予定です。通常の「保険」「金融商品」ではハードルが一気に上がってしまうためです。

木原 プラットフォーム企業と金融機関が連携する場合、お客様と継続的につながっていることを前提に、商品を開発できるところが強みになります。現在、多くの金融機関(特に保険会社)は「契約管理」と呼び、契約1件1件を管理単位にしています。そのため損害保険を例にすると、この契約をもっているお客様がどういった方かは当然わかりますが、一方でこれまでどういう契約を持っていたかがすぐにわかるようになっていません。

 損保会社も、親の自動車をお子さんが運転するときなどに使う1日だけ有効なオンデマンド保険のような、スマホで申し込めるライトな保品を開発しています。これは、お子さんが将来、自家用車を持つときに、通常の保険に入っていただく狙いで提供していますが、契約管理のままでは、その戦略を実現するのも容易ではありません。同じようにライトな商品を開発してもそこが違うので、金融機関がプラットフォーム企業として価値提供するためには、考え方を転換すべき領域もあります。

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司会者略歴
古嶋雅史(こじま まさふみ)。アクセンチュア 通信・メディア・ハイテク本部 デジタルビジネス統括 マネジング・ディレクター。京都大学工学部卒。1999年にトーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)入社。2007年に同社の情報・メディア・通信グループ統括パートナー就任、執行役員就任(同社ボードメンバー)。2011年にアクセンチュアの通信・メディア・ハイテク本部におけるエグゼクティブ・パートナーとしてアクセンチュアに入社。アクセンチュアではメディア・エンタテイメント業界およびインターネット業界の事業責任者を兼任し、さらに同事業本部におけるデジタルビジネス統括として通信やハイテク企業に対するデジタル変革やデジタル関連事業の立ち上げも幅広く手掛ける。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、技術、プレーヤー、イノベーション、AI、ICT

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